語感からそれがまるくて柔らかく、ふにゅっとした弾力を持つものだとわかる「おっぱい」という言葉を生み出した人に心から感謝したい。胸より、乳・乳房・胸部より、私はおっぱいが好き。

でも、私のおっぱいは円錐型で、横から見たらやや丸みを帯びた三角形。第二次性徴を迎え、膨らみはじめた時と同じような形のまま成長してしまった。
世で言うところの下乳がない。中学高校、そしていままで、成長とともにおっぱいの形も変わるだろうと思っていたら、あっという間に20代を折り返した。

私と同じ形のおっぱいを持つ人を探していた

お椀型で、まるい普通のおっぱいになりたかった。だけどその裏で「私だけじゃないんだ」と思えるように、私と同じ形のおっぱいを持つ人を探していた。

最初はクラスメイト。続いてグラビアアイドル。そしてAV女優。
相当な数のおっぱいを、そして裸を見ても、残念ながら同じように前に突き出したおっぱいを持つ人をまだ見つけられていない。
その過程で気づく。
ちょっと待った。大きく、重さやボリュームがあるからこそ重心が下になるのでは。
そこから、私が憧れて追い求めるのは大きくまるいおっぱいへと変わっていった。

おっぱいマッサージが流行った時は書籍をとにかく買い漁って、全部試してみた。
得られたのは、おっぱいを育てる動きは本の内容によって違う。けれど根本的な理屈や刺激する部位はほぼ同じという結果と、三角形のままほんの少しサイズアップしたおっぱいだった。
「美乳を作るっていったじゃん!」

まるくて柔らかくてきれい。
おっぱいとはかくあるべきだ、いまでも思う。

思うけれど。悩んじゃうけれど。カメラロールには、病的だと言われても仕方がないと思うほどのグラビアアイドルの画像やスクリーンショットが保存されているけれど。

下着売り場での衝撃

「お客様のお胸はハリがあるので」

下着を買い足しにいった時のことだ。半ば押し切られる形で試着をすることになった。
セールストーク、リップサービスありがとう。でも高いのは買わないよ。
そう思っていた。でも、はたと気付く。そこそこハリがあるからこそ、自力で前に突き出ることができる垂れないおっぱいなのかもしれない。

その一言を皮切りに、どんどん色とりどりのブラジャーを持ってくるフィッティングのおねえさん。

「お胸に丸みと高さを出すのは分厚いパッドだけじゃないんですよ!」
「高さがしっかりあるお胸なのでそちらに合う形をお持ちしました!」
「しっかりした素材なので、お胸が背中に流れにくいんです!」

鏡に向き直ると、ぴったりとカップに収まっているおっぱいがあった。気にしていた形も、無理矢理に潰されることもなくカッコいい形に仕上がっている。
カップに沿ってぷくっとまるくなったおっぱい。ブラジャーの形でこうも変わるものなのか。

それからは、恥ずかしがらずに必ずフィッティングをしてもらって、おっぱいについての悩みを相談するようにしている。

下着屋にいるヴィーナス

これもその時限りのサービストークかもしれないが、
「お胸はどんどん変わっていくのでなんでもご相談ください」
「ストラップの調節だけだとしても、迷ってしまうことがあれば遠慮せずご来店くださいね」
と女神級の優しさと真摯さを見せてくれる。こうやってたくさんの女性の胸、いやおっぱいと向き合っているのだろう。

その日から、行きつけの下着屋のおねえさま方を心の中で「ヴィーナス」と呼んでいる。

ヴィーナスとの会話で、そして自分で調べに調べたときに得たおっぱいの知識は友達に還元されている。

わざといろいろな下着屋を回っていたので
「新宿ならこのお店に素敵なおねえさま(ヴィーナス)がいるよ」
「前にワイヤーが当たって痛いのならこの形を試してみれば?」
「こういう風にボーンが入っているとお肉が逃げにくくてなかなかいいよ」
「意外と背中の筋肉が育乳に繋がっているみたい」
こんなことをいっているうちに、親しい人たちの間ですっかり「おっぱいの人」と認知されるようになった。

大きな胸に憧れて、自分のために始めたおっぱい観察、マッサージ、そしてヴィーナスとの会話。いまでは下着を買うのがひとつの楽しみになっている。

おっぱいの好みや悩みはは人それぞれ。

ぷっくりしたとカーブを描き、つんと上を向いているおっぱいを、ショーウィンドウで確認し「よしよし、今日も悪くないぞ」と思いながら街を歩いている。

ペンネーム:スズキコトハ

ADHD・その他に悩まされながら社会をぷらぷらゆらゆらしている。
好きなことは調べもの。 死ぬまで学生でいたいな。
Twitter: @kotoha_126