失恋は、無理にでも立直らなければならないものなのか。

「失恋から立ち直る方法」と銘打った記事は山ほどあるし、別れちゃった、とカミングアウトすれば「次、次、いい人狙っていこ」といわれることが多いのではないかと思う。まるですぐ立ち直らないのが悪いことであるかのように。

失恋したときの気持ちなんてケースバイケース、人それぞれ。おいそれと簡単に侵入できる領域ではないはずなのに。

こんないい人を私がいつまでも繫ぎとめていいのだろうか

今日は、私の人生の中で一番つらかった、でも一番ドラマチックだった失恋のことを書きたい。

私と元恋人は人から見てものんびりしていて、自分たちでも(少なからず私は)緩やかで温かい付き合いに満足していた。思った以上に馬が合って、長話をしたり近所の街に出かけてみたりしているうちに5年が経っていた。

しかしカミングアウトしていたとはいえ、発達障害や、好転と悪化を繰り返している持病の関係で職を転々とする私と、堅実に企業勤めをしていた彼との間に大きな差が開いてしまっていることを感じていた。それでも相手は私を拒絶することはなく、むしろ病気について調べてくれることもあった。

けれど時間が経つにつれ、私が苦しくなってしまったのだ。そんないい人をいつまでも繋ぎとめていていいのだろうか。どこまで先のことを考えていいのだろうか。

一見相手を思い遣るような言葉だけれどこれからやってくるであろう、社会経験の不釣り合いに幻滅される日や、私への優しさが使い果たされてしまう日を恐れるがゆえに出るものだった。そんなことをぐるぐる考えるのがつらかった。ただのわがまま。心を守るために別れを切り出してしまった。

ストレートに、スマートに別れられればつらくないと思っていたのに

そうして話し込んで少ししたあと
「それではお元気で」
と私が住む部屋のドアが閉まった。

わあわあ泣いて、それだけでは飽き足らず、身体中に蕁麻疹がポツポツと現れ、高熱を出して一日寝込んだ。

矛盾なくストレートに、スマートに別れられればつらくないと思っていた。そのためにパワーポイントの資料まで作ったのに。

いまの私の状態にはじまり、相手が疑問に思っていることへの回答・年齢ごとのキャリアプラン・貯金の目標額、持病のある私と付き合うリスクについて。そして約束もしていない未来の話。口には出せないから、「結婚したい」という言葉まで文字にして見せた。

でも、渾身のパワーポイントは私を助けてはくれなかった。身体が拒否するほどにきつかった。すっかり心の一部になっていた大事なものが剥がされるような感覚が襲う。

私たちの5年間は若者にとって貴重な時期と重なっていた。大学生活にアルバイト。就活を経て、少し世の中を知って社会人へ。もちろん恋愛だってする。

社会に出るための土台作りを終え「大体みんな同じ」からいよいよ離れる、という大イベントかつ自身のカスタムを本格的にはじめる時期。

そんな時期を一緒に過ごした相手のことなんて、忘れられるわけなんてない。
たとえこれから別の相手と結婚したとしよう。でも、きっとこの経験を忘れることはしない。

とってもいい時間だったよ、そういえる

実はいまでも思い出すたび少し悲しい。
しかしその人のことしか考えられず、熱を出して泣き暮らしていたあの頃とは違う悲しみ。悲しいけれどそれはそれとして、とってもいい時間だったよ、カッコつけずにそういえる。それはきっと無理をして過ごした時間を忘れようとしなかったから。

喧嘩別れでも、円満な別離でも、別れた相手をどう思おうかは自由だ。周りにとやかく言われる筋合いなんてない。

寂しさから誰かに甘えたくなる気持ちもあったけれど、私の元恋人は、そしてその関係性はぺらぺらに薄くねえんだよ。唯一無二だった人間の代わりなんてそう簡単にできるかバカ野郎。

気の済むまで失恋に溺れればいい。

でも「気が済むまで引きずってやるからな」という強気の失恋は私を変えた。

強くなったというより、もしかしたら私の中で、恋愛はすごく大きく重たいタスクだったのかもしれない。

相手に甘えて後回しに、そしてなあなあにしてごまかしていたことと向き合う時間が増えたからだろう。落ち着いて自分を見る時間が取れたおかげで長く続けられる仕事が見つかり、ついでに苦戦していたダイエット法を見直した結果、ひと月で10kg痩せた。

失恋したって焦らなくていい。つらいときは大袈裟なくらい泣いて、布団に潜り込めばいい。(逸脱しない程度に)暴れて、気の済むまで失恋に溺れればいい。
「私はとってもいい恋愛をして、健康な血肉と心を手に入れた」
失恋が健やかな思い出へ変わったその日こそ、それはぴかぴかに輝く価値を持つのだと、私は、思う。

ペンネーム:スズキコトハ

ADHD・その他に悩まされながら社会をぷらぷらゆらゆらしている。 好きなことは調べもの。 死ぬまで学生でいたいな。 @kotoha_126