私の顔面は、生まれつき可愛い。

千年に一度の可愛さではないけれど、クラスで一番か二番くらいには可愛い。可愛いだけで、年に一回か二回、一度か二度しか話したことのない男子から告白されたりもした。可愛いだけで、一度か二度しか話したことがないのに好きになった男子に告白したら、何故かOKされてしまった。

しかし、すぐに振られてしまう。
「思っていたのと違った」とよく言われる。

「黙っていればモテる」っていうのは、人格否定じゃないかね

男友達に「何でモテないんだろう」と尋ねたら、「内海は黙っていたらモテるよ」と言われた。高校一年生くらいから、十年くらい同じようなことを言われ続けている。私と長年友人をやっている実績があるから、彼のことはギリギリ許すけれども、「黙っていればモテる」っていうのは、人格否定じゃないかね。人形みたいに、何も言わずニコニコしていれば、モテるだなんて。

しかし男友達は、続けて言うのだ。「でも内海はそのまま行ってほしいわ」。それは、孤独の道をか?

そういえばこの男友達、もうすぐ結婚式だな。おめでたいから五万は包む。このような大事な友人等の存在によって、内海は「そのまま」来てしまったのだ。私らしい生き様で、私だけの道を。

社会人になり即断即決の恋愛をしてきた

社会人になってから、恋愛のスパンは短くなった。お互いに時間がないから、お品書きの一文字一文字と睨めっこして異性をゆっくり選ぶようなことはなくなって、優柔不断さを削って、即断即決の恋愛になる。

社会人になってから、私に「黙っていればモテるよ」なんて正直に言ってくれる男友達は出来なくなった。せいぜい、私のナチュラルボーンカワイイに釣られた男性が、少し強気に口説いてくるだけだ。

私も「知ってもらう努力」を怠るようになった。何回か会った後に告白するよりも、一回や二回で告白した方が成功率が高いっていうのは、悲しい気もする。下手に知ってもらうよりも、ナチュラルボーンカワイイだけで勝負した方が、勝率は抜群に良い。

顔面を理由にモテて、実態を理由に愛されない。

そんな私は、自分の部屋に、恋人を招き入れることが苦手だ。社会人の恋愛は進展が早いので、すぐに恋人が家に来る。あれは、どうにかしてほしい。すぐにボロが出るから。私のナチュラルボーンカワイイが台無しになってしまうから。

本棚を見られるのが耐えられない。冷蔵庫の中身を見られるのが耐えられない。クローゼットの中を見られるのが耐えられない。調理器具のラインナップ、使っている洗剤、部屋の芳香剤、掃除の行き届き具合、家具の配置、家の中の動線、寝間着、その何もかもが、見られたくないものになっている。

私の部屋は、私らしい選択の積み重ねで出来ている。しかし、部屋に遊びに来た男友達は、口を揃えて「ちゃんと生活しているのは伝わってくるけれど、モテ部屋ではない」などと言う。私の実態は、いつも顔面の期待値を超えない。顔面を理由にモテて、実態を理由に愛されないような気がする。

「カワイイは作れる」らしいけれど、ナチュラルボーンカワイイでやってきた私には、どうやったら可愛いか、何をしたら可愛いかなんて、さっぱり分からない。常に勉強中の身である。寧ろ、私の選ぶ言葉の一つ一つで、私の取り上げる話題の一つ一つで、私の「可愛い」が台無しになってしまうことを、私は知っている。減点方式で、「思っていたのと違った」と幻滅される。

私の努力は、ナチュラルボーンカワイイの期待値には、到底敵わない

殿方をガッカリさせないように、料理教室に通って、毎日ストレッチをして、たまにエステに行って、たまに筋トレをして、言葉遣いに気をつけて、オチのない話をしないで、一生懸命生きている。本棚には、オタク趣味がバレないように、見られても恥ずかしくない本しか置いていない。他は全て電子書籍だ。中古よりも値が張るが、仕方ない。

これだけコストをかけても、「思っていたのと違った」を食らってしまう。私の努力は、ナチュラルボーンカワイイの期待値には、到底敵わない。

一番コンプレックスを刺激されるのは、とりわけ顔面がいいということもないのに、愛される人だ。顔面が可愛くない彼女達は、顔面を理由にモテることはないけれど、顔面を理由に過度に期待されることもない。加点方式なのだ。「料理が上手」とか「話が面白い」とか、彼女達は、「思っていたのと違った」という理由で、実態に即して愛される。私とは違う。

そもそも、私のナチュラルボーンカワイイだけを見て自信満々に迫ってくるような男性よりも、「料理が上手い」とか、微細な長所を長所として扱ってくれる男性の方が、私は好きだ。しかしそういう男性は、私みたいなナチュラルボーンカワイイには、寄ってきてくれない。身の丈に不相応に膨れ上がったフェイクの恋愛経験が、彼らを遠ざけるのかもしれない。「俺より店知ってそうなんだよな」って男の子に言われた時、そんなことを思った。

私の顔面は、生まれつき可愛い。
私の顔面は、私を必ずしも幸せにしないけれども。