私は新人看護師だった時に、上司でいい歳をした医者に知らないうちにホテルまで連れて行かれたことがある。恐ろしい経験だった。未遂で済んだからいいものの、あの時逃げられなかったら、ヤバかった。と今でも冷や汗をかく事がある。

飲み会で連絡先を交換、職場の人間関係が円滑になるかも!

もともと、私の働く病院では全体的に医者と看護師はあまり仲が良くなかった。医者に薬剤などの確認の電話をすると、忙しいと怒鳴られることもあった。あまり意思疎通がうまく行かず、もっと仲良くなれたらいいのに、と思っていたことを覚えている。
就職して半年くらい経った時、職場の飲み会で一人の医師と偶然席が横になり連絡先を交換しようと言われた。断る理由もなかったので、交換してその場では仲良く話す事ができた。そうして、その後職場で会う時には笑顔で挨拶できるようないい関係になっていた。あくまで、いい関係というのは今まで怒鳴られたり、無視されたりしていた時から比べて、比較的マシな関係になったという事だ。

しばらくして、いきなり「今度飲みに行きませんか。」と誘われた。私は純粋に、これからの職場での円滑な人間関係に繋がるかもと嬉しく感じた。しかし、相手は30代後半で明らかに恋愛対象ではなかったため、勘違いされないようにもう一人の同期の看護師を誘い、3人でご飯にいくことにしたのだ。

カラオケに行ったはずが、バスローブに着替える医師たち……

迎えた当日、医者も一人増え、4人で合コンのような席になっていた。豪華な焼肉をご馳走してくれ、そのまま個室のカラオケに行くことになった。私たち女子は、特に怪しまずにそのまま個室へと通されたのだが、そこにはなぜか大きなベッドが1つとカラオケセットがあった。明らかにおかしい。と思い目配せをしあった。さらに、なぜか医者らは部屋に入った途端に付属のバスローブに着替え始めていた。私たちは呆気にとられ、ただ茫然と眺めることしかできなかった。

入職して半年で、上司がいきなりカラオケでバスローブに着替え始めたからと言って、立場上すぐに無視して走って逃げることはできなかった。二人で身を固くしてソファに座り、互いに手を握り合い、相手がどう動いてくるかを待つことにした。するといきなり王様ゲームが始まり、不穏な匂いがしたため、いよいよ私たちは逃げる覚悟をした。幸運にも次の日は勤務日だったため、それを口実に帰ろうとすると、いきなり顔を掴まれキスされそうになった。もう一人の同期はなぜかバスルームに連れて行かれて、2対2の場面へと強制的に分かれさせられたのだ。それでも私たちは、必死に二人で手を取り合って部屋の外へ出た。向こうも暴力的に襲おうというわけではなかったから、なんとか逃げられた、というのが現実だった。

なんとか逃げられた。でも、もしひとりだったら……

キスをしようとする時も、「どうしてもう一人を誘っちゃったの、二人で会いたかった」などと言われ、背筋が凍る思いをした。そもそも、4人いるのにベッドが1つの部屋で何を期待していたのだろう。同期には後日何度も謝罪をしたが、もし彼女がいなければ、あの時どうなっていたかわからない。あまりにも卑劣な行為だった。
そうして無理やり部屋から出た後は、男2人も諦めて、服を着替えてタクシーで送ると言われた。一体、奴らはどういう神経をしているのだろう。もちろん私たちは断って歩いて帰ることにした。その正体不明な施設の前で、「じゃあ気をつけて」と言いながら、背を向けてとぼとぼ歩く奴らは恐ろしく不格好で、こちらが情けなくなるほどであった。

妻帯者だということもわかった。でも、何もなかった振りをしてあげた

事件の後、職場で会うときはかなり気まずい思いをした。私は先輩の誰にも相談できなかったし、同期もできなかった。奴らは幾分申し訳なさそうな顔をして、必要最低限の会話をしてくる。そういう時に何もなかったような振りをして、接してあげているのだ。情けない男たちに。さらに、首謀者は妻帯者であったことも判明しそのまま何処かへ転勤していった。
どうして、私たちに期待なんてするのだろう。焼肉とカラオケ代で、一体何を得られると思っているのだろう。私と同期は、その後焼肉に行くたびに「自分たちの稼いだお金で食べるようがよっぽどおいしいね」と言い合う。本当にその通りなのだ。

忘れることのできない恐怖。私の人との縁まで奪っていった男たち

私たちの悲惨な経験から判明したことは、奴らはこれが初めてではない。ということだった。あまりにも手慣れていたし、カラオケともラブホテルとも判断できない店まで熟知していた。そして、この病院の医者と看護師の不仲はこういうところから始まってしまっているのかもしれないと感じた。こんなことをされて、今後仲良くなれるはずがない。何人かの看護師は、新人の時にこういう性的な仕打ちをどこかで受けているのかもしれない。

私は、今後一切医者との個人的な誘いは断るようにしている。もちろん、いい医者が数多くいることは理解できる。でも、あの時の恐怖は今でも忘れる事ができない。そういう意味で、奴らは私が本来なら出会えるはずだった様々な人との縁まで奪ってしまっているのだ。

もし、今できることなら、あの時に見た情けない奴らの背中を思いっきり蹴り飛ばしてやりたい。