大学院でジェンダー研究をしている。
他人にそのことを伝えると、「あの子、芸人の〇〇に似ているけど、これって言ってもいいやつ?」「見た目って、褒めてもセクハラなの?」などと、主に男子学生からリトマス試験紙にされるはめになる。私からの答えはいつもひとつだ。
「迷うなら言うな」。

彼らが女の子へ伝えるつもりだった、見た目をジャッジしまくりの言葉たち

私が検閲した褒め言葉“もどき”は、女性たちに届かずに済んでいる。そのことにホッとしつつも、私のところで差し止められた言葉をひとりで思い返してはゾッとしている。これ、仮に私が言われていたら絶対傷つくし、見た目についてのコメントってどんなものでも一生忘れられないし、私だったらきっと相手のことを言葉でボコボコにするだろう(私みたいな人に言えば怒ると分かっているから、怒らなさそうな相手にクソコメントをするわけだけども)。

しかし、私のことをリトマス試験紙にするだけの礼儀知らずさは不思議と持っているんだよなぁ。伝えるべきかどうか迷うということは、言われた本人が喜ぶかどうかは微妙だなと、自分の中にあるセンサーがちゃんと作動したということだ。であるならばどうして、心の中で思うだけに留めることができないのか。なぜ、「ワンチャン笑いに転換できるんじゃないか」とねばってしまうのか。みんな芸人なのか?(こういう時、バラエティー番組の自虐や見た目いじりの悪影響をすごく感じる)。

褒め言葉“もどき”を添削させられる私だって、「うえっ気持ち悪っ!!!」と感じるかもしれないというところまで、どうか想像してほしい。彼らが他の女の子へ伝えるつもりだった、見た目をジャッジしまくりの言葉たちは、私の心に沈殿している。この言葉たち、覚えているだけでけっこう消耗する。いっそ忘れてしまいたい。

誰かの見た目を、自分の物差しでジャッジするな

ジェンダー研究をしていようがしていまいが、人と関わって生きる以上、他人の顔や身体に対して好き勝手コメントするのはあり得ないことであり、気持ち悪いことであることくらいは知っておくべきだ。要は自分がルッキズムに乗っかっていないか再考しようということ。

「はいはいブスとかデブとか言わなきゃいいんでしょ分かってますよ」と聞き流すやつほど注意が必要だ。直接ブスと言うことがハラスメントになることはどんな馬鹿でも分かる。危険なのは、当人が「褒めたつもりなのに!」と心の底から思ってしまっている場合だ。特に「○○に似ているね」系は、褒めたつもりで放った言葉だとしても、言われた側がその○○さんを好ましく思っているかは分からないわけで、微妙な気持ちにさせられる確率が高い。こんなことを言うと、「えっ、だって(女優またはアイドル)だよ? 褒め言葉じゃん」などと返されることもあるが、「ねばるんじゃねぇ!」と言いたい。

大切なのは誰かの見た目を、自分の物差しでジャッジするなということだ。仮にジャッジしちゃったとしても、心の中に留めること。仲が良い・悪いに関係なくだ。関係性がどんなに良かろうと、見た目について何を言っても良いわけではない。

「痩せたね」と言われるのが辛い

あと個人的にこたえるのは、出会い頭に「痩せたね」と言われること。「太ったね」も最悪だが、「痩せたね」も嫌だ。痩せたのだったら良いじゃないかと驚かれるが、そこには「細い=きれい」なのだからその人にとっても良いに決まってるだろうが、といった無意識の価値付けが潜んでいる。

私自身、細ければ細いほど良いと思っていた頃もあったけれど、だんだん違和感を覚えて、もう「細くなければ美しくない」という価値観のもとには生きていない。ボディポジティブという言葉があるが、プラスサイズであろうと、傷があろうと、自分の身体をありのまま愛そう、という考えに賛同している。

だから「痩せたね」は、痩せた身体になりたくて、自ら進んでダイエットをしている人ならばうれしく感じるかもしれないが、ただ日常を過ごしているだけの人にとっては心がざらつく。自分で自分の身体になにも働きかけていないときに、他人から私の身体にコメントされたくない。放っておいてほしいのだ。

そして痩せた・太ったに関しては、本人のいま置かれた状況や、体質、服用している薬など、ぱっと見ただけでは分からないバックグラウンドが影響していることがあるため、ほんとうに慎重になった方が良い。

私も昔やらかしたことがある。「痩せているね」という言葉を、友達のスタイルを褒める意図で何度も言い、結果として傷つけたことがある。その子にとって、ほっそりした身体はコンプレックスだった。その子が言った「痩せたくて痩せているんじゃないんだよ」を、本気で謙遜だと思いこんでいた。「またまたぁ~」と、笑ってしまった自分をはったおしたかった。どんなに仲が良かろうと、顔や身体へのコメントは相手の心に一生残る。

髪型、服、メイクなど、センスを褒めればよい

話が長くなってしまった。ここまでくると、面倒くささを感じる人もいるかもしれない。じゃあどうやって褒めたら良いんだよと。でも実はぜんぜん難しくない。髪型、服、メイクなど、センスを褒めればよいのである。「髪切ったんだ、似合ってる!」「ネイルの色いいね!」これだけで済む。なんなら、「髪、切ったんですね!」「靴、新しくしたんですね!」と、自分の感想はいっさい含めず、目の前にある事実を述べるだけでもよい。

「女性はそれだけで本当に嬉しいのか?」と感じるならば安心してほしい。少なくとも求めていないクソコメントをもらうよりは100,000倍嬉しいし、気に入っているものについての話題なら楽しく話せる。きっと円滑なコミュニケーションができることだろう。外見を褒めることにおいては、謎にチャレンジ精神を発揮してオリジナリティを出そうとせず、相手が安心できることを優先するのが肝要だと考える。