前回、NiziUについて書かせてもらった際に、話がぶれてしまう気がしてカットした部分があります。
『BLACK PINKさんには嫉妬しない』というお話。

BLACK PINKさんの同じ人間とは思えないスタイル、圧倒的パフォーマンス、美しさに、我ら最強と言わんばかりの強さを兼ね備え、ミュージックビデオはいつだってハリウッド映画さながらの世界観。どう考えても嫉妬の余地がありません。
このことから思うに、人は死ぬほど手を伸ばしても届きそうにない対象には嫉妬しない生き物なのかなと。彼氏が可愛い芸能人のことを好きって言ってるとムッとなるけど、米倉涼子さんが好きって言われるとそれ以上何も言えなくなるみたいな。
・・・少し話が逸れました。本題に戻ります。

韓国のアイドルは、握手会がなくても恋愛をしても評価は変わらないでしょう

その嫉妬の対象にもならないほどのBLACK PINKさんをはじめ、主に韓国で活動をするアイドルさんたち。正直私はそこまで詳しいわけではないので、あくまでイメージの話になってしまうのですが、皆様方は握手会などのイベントをしなかったとしても世界中に山ほどファンがいるし、きっと恋愛をしていようがその評価が揺らぐことはないでしょう。

それに比べて、日本のアイドル、少なくとも私が属するグループにはやはりスキャンダルご法度のイメージが残っているし、握手会での振る舞いが人気を大きく左右しているように思えます。その違いはなんなのでしょう。

「ファンの方をがっかりさせる?」黒髪からの逸脱に迷っていた18歳

韓国のアイドルが新曲を出すたびに新しい髪色やヘアスタイルでファンを楽しませているのに対し、私は18歳の時、髪の毛を少し茶色に染めることすらファンの方をがっかりさせてしまうことのような気がして、とても慎重になっていました。現にどの時代も後輩達が黒髪からの逸脱に迷っている場面に何度も出くわしています。

ファッションもそう。小学生の時から池袋のダンススクールに通っていた私は、デビュー当時、頭にバンダナを巻いた上にハットを被り、上下黒のPLAYBOYを好んで着るようなダンスっ娘でした。まだ入り待ちや出待ちがOKだった秋葉原の劇場にその格好で出入りすると、それを見たファンの方がブログに「峯岸の私服はアイドルらしくない」と書いていて、私はすぐさまリズリサでピンクの花柄のワンピースを買いました。その服を着た日、ブログには「アイドルらしくてとてもよい」と書かれていて、ホッと胸を撫で下ろしたことを今でも鮮明に覚えています。

「日本の男性は若い女の子が好き?」でも全員がそうではないはず

どうして黒髪でなければいけないんだろう、好きな服を着ちゃいけないんだろう・・・
「日本の男性は若い女の子が好き」「アイドルファンはいつだってアイドルに処女性を求めている」そんな風に言われているのを見かけたことはありますが、全員がそうだというわけではないはずです。

これは最近気づいたことなのですが、意外にも、アイドルである私達自身の中に“アイドルとはこうあるべき”という概念が刷り込まれているのかもしれません。
若くしてアイドルになったメンバーは、自分という個が出来上がる前に人の目に触れ、さまざまな意見を耳にして、アイドルに対する漠然としたイメージを持ったまま活動する。
そして少し大人になった時、遅れてきた自我が芽生えるのです。

国は関係ない。それを補う魅力があれば

AKB48の中には板野ともちんのように早い段階でガンガンに髪を染め、自分のキャラクターを確立して多くの支持を勝ち取ったメンバーがいるし、今は日本のアイドルでも自由なファッション、恋愛もオープン、公にタバコを吸っているアイドルも存在する時代。それがダメだという決まりはどこにもありません。

そうなるともはや国は関係ない。アイドルがアイドルらしくいなきゃいけないとされているのは、日本の男性のせいでも、アイドルヲタクのせいでもない。自分らしさで戦える自信がない、そもそも自分らしさがわからない私の弱さへの言い訳だったんだと思います。

何をしていようとも応援したいと思う魅力があるかどうか、自分の好きな髪型で、ファッションで、自由に振る舞いながらもアイドルとして支持されるには人を魅了する何かがあればそれでいい。

この子の顔が好きだから
この子のパフォーマンスが好きだから
この子のファッションが好きだから
この子の考え方が好きだから
生き方も含めて好きだから

そんな風に思ってもらえるポテンシャルさえあれば、そしてその自信があれば、どこからともなく作り上げられたアイドル像に飲み込まれずに済んでいたのかもしれません。私が坊主を選択することもなかったのかもしれません。
自分のことを少し認められるようになった27歳の今、そう感じています。
私のせいで世界中におかしいと非難されたアイドルファンの皆さん、あの時は本当にごめんなさい。
今も応援してくれるファンの皆さん、本当に感謝しています。

魅せたい自分を確立できれば、いつでも誰かのアイドルになれる

デビュー当時の私も、したいなら茶髪にすればよかったし、上下黒のPLAYBOYだって堂々と着ていたらよかったのに。
あの時はそう思えなかった。だけど今からでも遅くない。

憧れのアイドルになったことをゴールにせず、自分が魅せたい自分を確立することができたなら、現役中も、アイドルを卒業してからの人生だって、誰かにとってのアイドルでいられるんじゃないかな。

自分の意思でアイドルの美学を貫く女の子達に敬意を払いながら、自分が何者か分からなくなってしまったアイドル達のヒントになることを願って。
なにを肯定したいわけでも、どれを否定するつもりもない、留年アイドルの朝が明けようとしています。

Tokyofm「峯岸みなみのやっぱり今日も褒められたい」10月1日スタート!

峯岸みなみさん

◇放送時間:木曜日21:00-21:30

◇出演者:峯岸みなみ(AKB48)

AKB48の1期生で、朝日新聞の女性向けWEBコラムサイト「かがみよかがみ」内でコラム連載を持つ峯岸みなみの新番組がスタート!アイドルとして15年の活動を経て、30歳という年齢が見えてきた一人の女性としてリスナーと本音で向き合う30分の番組です。一日の終わりくらいちょっと褒められたい。そんな思いを共有しませんか?