私には、忘れられない一言がある。胸の奥深くに突き刺さっていて、どうにもこうにも抜けそうにない、鋭い言葉のナイフ。
もし、いつかそのナイフが抜けても、消せない傷跡が残るくらいのシロモノだろう。

旅行の帰り道、彼が放った言葉は「私の心」にずっしりと刺さったまま

それは、彼氏と彼氏の男友達と、私の女友達、私の合計4人で遊んだ帰り道のこと。みんなで遊んで、とても楽しかった小旅行の帰り道。
友達と別れ、彼氏と2人で電車に揺られながら、私の家へと帰る途中「楽しかったね」と言い合いながら、私が疲れ果てて眠ろうとしていた時だった。
彼は嬉しそうな顔で、私の手をギュッと強く握りしめてこう言い放つ。

「この旅で『僕は君を好きでよかった』とはっきり思い直したんだ」と、微笑む。眠気の中でもその言葉は心地よく私に響き、どうしてそう思ったのかを聞くことにした。

「え?嬉しい。どうしてそう思ったの?」「でも、私の友達、とても可愛かったでしょう。目移りしないか心配してたのよ」だとか、照れ隠しまぎれに色々と返事をした。それが転じて災をもたらすなんて、思いもせずに。

「確かに、君は容姿では負けているかもしれないけど、僕の一番だ」「君の友達は性格がキツかったし、僕とは合わない。喧嘩でもふわふわしている君がいい」
彼は、まるでそれが100%の答えであるかのように、とびきり甘い顔をしてそう言った。

しかし、それは100トン級の矢となり、私の心に突き刺さる。眠気なんて甘ったるいものは、どこかへ吹き飛ばされてしまった。

「そう……」と答えるのに精一杯だった。はじめは聞き間違いかと思った。もしくは、彼の口が滑ってしまって今頃ハッと青ざめた顔をしているのではないかと彼を見つめ返したが、彼はニコニコしながら、こちらを見ているだけだった。

そう、言い間違いでも、言葉のあやでも無いわけね…。

可愛いも綺麗も、私はあなたの彼女なのに…1番じゃないの?

つまり、容姿では負けているのか、私。ふと涙が出そうになるが堪える。頭の芯にいきなり氷水をぶっかけられた感じだ。眠かった頭が痛いほどひんやりして、やけに冷静になる。

確かに、私の友達は可愛い。一緒に街を歩いても、ナンパされるのはいつも友達だ。そうなのだけれど。何より、ぜったいに、どうしても、彼だけには、そう言って欲しくなかった。いつも、彼が「可愛い」「綺麗だよ」と言ってくれている言葉は何だったのだろう。彼の可愛いの基準では、常に1位でいたかった。だけど、どうやらそうではないらしい。どうやら、彼氏から見ても、容姿では友達に負けているらしい、私。

急に悲しくなった。彼氏に容姿について否定されるとは思ってもみなかったのだ。それも、誰かに負けているだなんて!
街で通り過ぎる人に、後ろ指指されて「ブス!」と叫ばれる方がよっぽどましだ。
それなら可愛くなってやるよ、努力もするよ、だけど、そういう話じゃないんだよ。その言葉を放ってしまったのが、彼だったことが問題なんだよ。

それに、容姿では負けているけど、喧嘩で言い返さない私。だから私を好きなのだろうか、彼は。私の価値は、そんなところにあるのだろうか。

私は喧嘩が苦手で、いつも半歩引いてしまうのがコンプレックスだった。その一方、可愛い友達は恋人に対してもスパスパと物事を言えるタイプで、その強さに憧れていた。私の何も言えない表面的な優しさ(裏ではぶつぶつ思っているのに)が、彼女の強さと可愛さに敵うはずがないじゃないか。

私の1番の理解者であるべき彼に、あまりにも唐突に裏切られた気分だった。私だって、気付きたくないけど、気付いていたよ。友達が可愛いことも、私がそれほど可愛くないことも。

彼は褒めたつもりでしょう。でもね、私にとっては傷つく言葉…。

彼の言葉は鋭い鉛の矢となって、私の心臓をめがけて一直線に投げられた。その言葉を聞いた途端、私の身体を巡る血液全てが鉛になってしまったくらいに身体がどっと重くなり、電車の座席に沈み込みそうになる。

さらに、その後も彼は喋り続ける。いかに私がいい子なのか、部屋で見る私よりも外で見る私の方が可愛かったとか何とかを…。でも、どの言葉も私を通り過ぎていくだけだった。まるで、快速電車の窓から見る通過駅のように。ヒュンヒュンと流れていくだけだ。

最初の「容姿では負けているかも」が永遠に私の頭の中をぐるぐるとスパイラルしていて、その後の言葉を受け入れるのは難しい。この言葉は、今後の人生において、仮に私が彼と結婚しても、その間に子供ができても、私がおばあちゃんになっても、忘れられないだろう。あの時、彼は本当に自分の100%の自信を持って私のことを褒めてくれていたのに、誰よりも傷つけていたなんてきっと知らないままだろう。

私は、彼に伝えるべきなのだろうか、それとも、ずっと私一人で傷つき続けるべきなのだろうか。

どう思いますか、みなさん。
あなたなら、どう受け止めて、なんて答えますか。
それとも、こんな私みたいに、たった一言で、これほど傷つかないのかな?