私はずっとショートカットだった。

女の子とおままごとをするよりも、男の子と一緒に走り回っている方が好きだった。小学生になっても、男の子に紛れてドッヂボールをしたり、学校が終わってからゲームをしたりしていた。

「自分が男の子だったらよかったのに」と思うこともあった。

「似合わない」と言われても、私は女の子らしいものが好きだった

でも、私がショートカットにしていたのはそういう理由からじゃない。
私はもともと、プリンセスが大好きだった。特に『眠れる森の美女』の『オーロラ姫』が大好きで、ピンクのドレスもブロンドの髪も、すべてが輝いて見えた。女の子らしいものが大好きだったのだ。

だから、男の子と遊びながらも、クラスにいる髪の長い女の子や、ピアノをすらすらと弾いて見せる女の子に憧れていた。その憧れは誰にも打ち明けることはなかったけど、私はひそかに思っていた。「なんて美しいんだろう」「すてきなんだろう」と。
でも、そうなれないと確信したのは、周りから繰り返し言われていたある一言だった。
「あなたに女の子らしいものは似合わないよ」

それは母や父、友達のお母さんからも言われていたことだった。
髪を伸ばしたことがなく、男勝りな性格で、スポーツ少女(10年近く結構本気で水泳に打ち込んでいた)だった私のイメージに、例えばフリルやピンク色だとか、そういうものは似合わないというのだ。

私はスカートを穿かなかった。違う、穿けなかったのだ。
母に連れられて行ったショッピングモールの鏡の前で、スカートやワンピースを体に合わせてみても、そこには不格好な姿が映っていた。
私はジャージやジーパンばかりを着て、日々を過ごした。スカートを手に取ることは決してなかった。

エクステをつけた私は、まるで眠りから覚めたお姫さまの気分だった

転機は18歳の時に訪れた。
知り合いの男の人に「髪伸ばして見せてよ」と言われたのだ。髪を伸ばしたことのなかった私は、とても簡単な気持ちでそれを承諾した。ノリだった。似合うとは思っていなかったけど、面白いような気がしたのだ。知らないことはいつだって面白いから。

衝動的な性格の私は、髪が伸びるのを待ちきれなくて何度も「髪を切りたい」と思うだろう、そう考えてエクステをつけることにした。そして、それは大成功だった。

エクステをつけた私は、見たことがないほど、女の子らしかった。私はなぜだか、それを不思議な気持ちで眺めていた。「女の子だ」私が、真っ先に思ったことはそれだった。高校生になってからの私は、ショートカットを通り過ぎて男装に近い格好をしていた。それがどうだろう。髪型一つでこんなにも変わってしまうのだ。私はふしぎで仕方がなかった。

私は、その日すぐに服屋さんに駆け込んだ。私は、なんの迷いもなくスカートを手にした。今まで憧れを抱いて見つめ続けた、スカートを手に取ったのだ。怖いとは思わなかった。ただ「今の私なら穿けるかもしれない」と思った。私は勢いに任せて、店員さんに試着を告げた。念願のスカートを穿いてみると、私は涙が出そうなほど感動してしまった。心が震えるってこういうことなんだと私は思った。

お気に入りの服を選ぶ「権利」は、誰にも奪うことはできない

鏡には髪型を変えた時と同じ、いやそれ以上の“女の子”が映っていた。
ただの普通の女の子だ、そのことがたまらなくうれしかった。
そのスカートを私は、今でも大事に持ち続けている。

ファッションは自分のためでもあり、他者のためのものでもある。
だからこそ、服を選ぶ権利は、誰にも奪うことはできないはずだ。

私はずっとショートカットだった。今ならわかる。本当は、それでもスカートを穿いてよかったのだ。
でも、私に「あなたに女の子らしいものは似合わないよ」と言った人たちを責めたいとは思わない。
ただ、誰かの言葉で傷ついている人たちに、いつか光があって欲しいと祈るように思っている。