綺麗な顔は天性の才能。でも、私は「自分」を可愛がって生きたい

私は、私にしかなれない。
けれど、あなたはそれでいいの。あなたは大丈夫。絶対に大丈夫。
涙を流しながら、私はそんな言葉を自分にかけ続けていた。自分のことを「あなた」と呼びながら「あなたは、あなたでいいんだよ」と何度も何度も心の中で自分に言い聞かせていた。
事の発端は、ある日大学の広場を友人と共に歩いていたら、一人の男子学生が「アンケートよろしいですか?」と話しかけてきたことである。その男子学生は、それはそれは不自然な動きをして話しかけてきた。私の隣にいる友人に。
どういうことかというと、おそらく私の方が男が歩いてきた所から近いはずだったのに、私を回り込んで私の右側に立つ友人に話しかけたのだ。「アンケートよろしいですか?」と。
私も友人も時間があったので、友人はアンケートに答えることにした。友人が男から渡されたiPadに質問の答えをタップしている様子を、私は隣から眺めていた。
私は「アンケートなら多くの人の回答が必要になる」と思っていたため、当然友人の次に私もアンケートに答えるんだなと思っていた。
だが、友人の回答が終わると、男は私に目もくれず「ありがとうございましたー」と去っていった。
……え、不思議な間の後に、去っていく男の後ろ姿を見ながら「めいりにも質問しなくてよかったのかな?」と友人が少し困ったように言っていたが「うーん、ね」と微妙な返事をして私は歩き始めた。
私の友人は、比較的天然美人が多い。当時、私の隣に歩いていた子も可愛らしい子だった。アンケートの男に、いや、客観的に私は選ばれなかった。
そんな言葉が、私の肩にズシンとのしかかり、悔しくて訳がわからなくて仕方なかった。その日は普通に振る舞って帰宅したが、家で1人になった途端ポロっと涙が出た。
私には妹がいるが、妹は母に似て可愛かった。そんな妹が昔から可愛いともてはやされているのを近くで見てきたから「私は妹より可愛くない」と、幼い頃から頭に植え付けられてきた。だから、私はちゃんとわきまえてる。可愛くないとわかっている。
――けれど涙は流れて止まらなかった。ちゃんと人並みに努力はしてきたつもりだ。化粧の仕方を勉強して、アイプチも目立たないようにできるようになった。
なのに、なんで人に勝手に比べられて、見定められて、向こうが気づかない間に私がこんなにも苦しまなければならないのか。
「これ以上どうしろっていうの!私がどんなに頑張ったって、元から可愛い子が少し努力したらすぐに負けちゃうのに」と、いろんな思いが駆け巡った後「それでも自分を愛してあげなければ」とふと思った。
「私が自分を愛せなくて、誰が私を愛してくれるの?」
だから、私は心で「あなたは大丈夫。あなたはあなたのままでいいんだよ」と言い聞かせた。気休めかもしれない。けれど、自分にそう言い聞かせるしか手はなかった。
それをしなければ、心が壊れる。悔し涙を流しながら、一人うずくまって苦しんだ日を私は忘れない。いつの日か、自分は可愛いよと思える日は来るのだろうか?
だが、小さな頃から植え付けられた呪いは当分解けそうにないが、呪いはいつの日か解けると信じて、今は努力するしかない。
見た目の問題はどんな世の中にも、誰にでもぶつかる壁であろう。その壁の厚さは、悲しいことに人が生まれ持った顔によって違う。そんな壁が無くなることを願いたい。切実に。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
恋愛やキャリアなど個人的な経験と、Metooやジェンダーなどの社会的関心が混ざり合ったエッセイやコラム、インタビューを配信しています。