吾輩はパニック障害である。

ご存じない方の為に大雑把な解説をすると、現在『パニック症』と呼ばれる原因不明のその病は、脳の神経過活動や自律神経の不全によって、恐怖感や不安感を自力でコントロール出来なくなる病だと認識している。

すっかりアウトドア派だったのが、インドア派になってしまった

症状は人によって違うが、私の場合は弱くてめまいや吐き気、最悪だと過呼吸を起こして手足が硬直する。
この病気は拗らせると、度重なる体調不良が足枷となって、出掛ける事自体に恐怖心を抱くケースが多いらしい。

私も例外ではなく、すっかりアウトドア派だったのがインドア派になってしまった。病気をする前は旅行も好きだったし、車を一時間ノンストップで宛もなく走らせる事も出来た。今やブームのソロキャンプもひと足お先にハマったものだった。田舎住まいなので買い物に行くにも、病院に行くにも長時間ドライブが基本である。

そんな自分がこの病を拗らせていくうちに、すっかり自分の住む町内から出られなくなってしまった。田舎の家の周りにあるものは、コンビニとスーパーと婦人衣料店とドラッグストア。そして、百円均一ショップ、ダイソーである。

元々、百均マニア。肌にプラスだった百円コスメにのめり込む

私は元々、百円均一ショップマニアだった。きっかけは化粧品だ。まだ百均コスメがブームになる前、今みたいにかっこいいデザインの化粧品は販売されていない。チープなボトルに謎のイラスト、入ってるんだか入ってないんだか分からない『保湿エキス配合』という文字の隣に並べられた注釈の数も多い。
それでも、ただ『安い』というだけで、化粧っ気の無い私はひとつの化粧品を手にとった。

結論としては何が効いた、という実感は特にない。毛穴が小さくなったとか、肌が明るくなったという感動的なものは何もなかった。ただ、普通だった。肌は荒れないしニキビも出来ない。なんならスキンケアをやること自体なかったぶん、肌にはプラスだった。それが100円で出来る素晴らしさから、100円コスメにのめり込んでいった。

時が流れるにつれ、私の百円均一依存は深まった。レジンクラフトが流行ればお店をハシゴして手芸パーツを買い込んだし、アルコールマーカーが流行った時には毎日近所の店に入荷を聞きに行った。

この田舎でいつ行っても品揃えが違うというのは、とても重要な娯楽

それが出来たのも、近所に1軒、車で3分足らずの場所にそこそこの広さの百均があるからである。決して品揃えが良いとは言えないが、田舎ではかなり頑張っている方だ。
百均の新商品のリリースペースはとてつもなく早い。それ故に廃盤も早いので、『そこになければ無いですね』というフレーズがミーム化してしまう事もある。

しかし、この田舎でいつ行っても品揃えが違う、というのは、とても重要な娯楽だ。人気の商品が手に入れば嬉しいし、値段以上に価値のありそうな商品を見つけられるとワクワクする。なにか新しい事を始めようとした時も、100円から材料が手に入れば始めやすい。店舗によっても規模や品揃えが違うから、次はあのお店まで頑張って足を運んでみようかと思える日もある。お目当ての品が行く先で見つかった日には、宝探しが成功した気分になれ、私に出掛ける楽しみを思い出させてくれる。

それが今、パニック障害の私を救っている。多少のめまいが出ていようと、3分なら我慢ができる。具合が悪くなればすぐ家に逃げ帰れる。
百均は私にとっての、楽しみのリハビリ施設なのだ。

だからどうか、近所の店員さんに「コイツまた来たよ」と呆れられていないことを祈るのみである。