私はその頃中学生で、勉強も運動も人並み以上にはできた。勉強では学年トップレベルで、県内一の高校を目指していた。部活はバレーボール部に所属し、毎日汗を流し仲間と登下校を共にする青春を送っていた。
自分で言うのもなんだが、とっても親しみやすい性格の私は、基本的に誰とでも仲良くなることができた。
そんな私でも恋愛だけは不器用で、中学2年生の時にずっと席が近くて話していたある男子のことが好きだった。
おそらくその時点では両想いであったが、お互いに告白をするようなことは一切せず、そのまま3年生では別のクラスになった。3年生になってからは、周りの目もあり会話もほとんどしなかったと思う。
好きな気持ちは変わらなかったが、疎遠になったまま卒業を迎えてしまった。

しかし卒業式とは不思議なもので、この日だけは気軽に誰とでも話したりアルバムにメッセージを書き合いしたりできたのである。もちろん私は彼にもメッセージを書いてほしかった(本当は話したかった)。決して頭がいいとは言えなかった彼は私とは違う高校に進学することを知っていた。

ここで踏ん切りをつけないと前に進めない。意を決して彼に言った

「これからなかなか話せなくなっちゃうし、もしよかったら春休み一緒に遊ばない?」
勇気を出して誘った。彼はいいよ、と言ってくれた。彼とは和スイーツ好きという共通の趣味があり、行きたい場所もすぐ決まった。話も合う上、何より気が楽で一緒にいて楽しかった。これから新しい学校で、もしかしたら良い人がいるかもしれない。ここで踏ん切りをつけたかった。
駅で別れる直前、彼がばいばいと言って向こうへ行こうとする腕をつかんで引き留めた。
「また、あそぼ」
彼はもちろん、と返しそのまま別れた。変な間があったから勘づかれたかもしれない。心臓が口から飛び出そうとはこんな感覚なんだ。そう思った。

家に帰って、やっぱりここでけりをつけないとお互いに後悔する気がする。そう思った。
直接言いたかったけど、次あったら何も言えなくなってしまう気がした。LINEで今日は楽しかったね、などとどうでもいい話ばかりして深夜になり、ここで言おうと決心した。

直接言う勇気のないろくでなしだったと思うが意を決した。
「すきです、付き合ってください」
一か八かだった。何となくOKされる気も、振られる気もしていたが、もう吹っ切れたかった。いつも1時間以内に返信がくるのでどきどきだったがその日に返信はなかった。
次の日の夜、返事はきた。
ごめん、友達でいたい。

初めての失恋。それでもLINEとカフェ巡りは続いて・・・

初めて告白して初めて振られた。これで吹っ切れて高校生活をエンジョイしてやる!とその時は思った。でもなんだか急に寂しくなった。中学生と高校生との間に挟まれた私は誰にも相談することなく、その夜はひそかに泣いた。
でもなぜかLINEは続き、いつ話しても楽しかった。少しだけ気まずかった春休みも過ぎ、高校生になってからも一緒に抹茶パフェやほうじ茶わらびもちを食べに行った。夏には鎌倉のおしゃれなカフェへ、冬には桜木町の夜景を見に行った。そうして約2年という月日が流れ、彼は私が告白したことを気にしていない様子だったので、私も友達として遊んでいた。お互いに運動部で勉強も忙しかったが、それでも一緒に遊ぶ時間は特別だった。

お互いに恋人はおらず、友達として接していた。本当のカップルみたい、なんて思いながら、自分は振られた身だし、なんて考えたりもしたが、いつのまにか好きだったことも忘れていた。
「好きかもしれない、付き合いたい」
突然だった。いつものように忙しい合間を縫って予定を合わせ、朝から夜まで一緒に遊んだ帰り道、彼は唐突に言った。

びっくりした。そんな気が一ミリもなかったから。
じゃあなんであの時振ったの?今まで遊んでた時の気持ちってどうなるの?高校で仲いい女子との写真をいっぱいインスタにあげておいて何それ?え、私ってなんなの?多分混乱が大きくて嬉しい、というよりも戸惑いの方が大きかったんだと思う。
「ごめん、友達でいたい」
私はそういった。