私は3月に大学を卒業したばかりで、本当なら4月からは東京で一人暮らしをする夢を叶え、わくわくした気持ちで新社会人としての生活を始めているはずだった。

しかし、そんな未来は訪れず、新しいアルバイト先で生活費を稼ぎ、フリーターとして働こうとしている。私は21卒としての就活に敗北してしまったから。

大学4年の秋になっても内定を貰えない私。就活に違和感を覚え始めた

就活を開始したのは3年生の冬。友人に紹介された自己分析イベントに参加したことから始まり、そこから企業へのエントリーや「ガクチカ(学生時代頑張ったこと)」の作成、面接対策などをしていった。

私は将来叶えたい大きな夢は特になかったが、大好きな服に関わる仕事がしたいと思っていたので、アパレル企業だけを受けていた。

最初に受けた企業は1次面接を突破したが、2次面接で落ちてしまった。そこそこ行きたいと思っていたし、早期選考でうまくいけばそこで就活は終わりと考えていたのでショックだった。しかし、まだ2月で1つ目の企業だったから、すぐに立ち直り、違う企業にどんどんエントリーして面接を受けた。

しかし、周りのみんなが就活を終えている秋になっても内定はひとつも貰えず、私は就活に対して違和感を覚え始めた。

なんで真面目に取り組んできた私じゃなくて、大学の授業を休んで遊んでいるのあの子が大手から内定を貰えているのか。

なんで「ありのままのあなたを見せてください」と言いながら、みんな一緒の黒いスーツと黒髪の規定や「自己PRで言ってはいけない強み」があるのか。

なんで就活生側は面接辞退の際などにメールを送らないといけないのに、企業側は上から目線のようにサイレントで完結させるのか。

もう言ってしまったらきりがない。

日本は「新卒至上主義」。私は電車の中で涙が止まらなくなった

それから私は、面接で話す自分のアピールポイントに自信がなくなった。高校時代3年間頑張った吹奏楽部の活動で大会のメンバーに選ばれたことや翻訳コンクールで良い成績を貰えたことも、4年近く続けたアルバイトで昇給したことも、1年かけた卒論制作も全部意味がなかったのだと。

焦ったらだめだと分かっていたけど、日本は「新卒至上主義」だし、どんどん追い込まれていった。

毎日、布団に入っても就活のことで頭が一杯で寝られず、家の中でも口数が減り、テレビを見ても笑えなくなった。急に涙が出たり、街中ですれ違った人を見て「この人の強みはなんなのだろう」なんて考えるようにまでなった。良い大学にも行っているのに親にも申し訳なかった。

誰にもこの悩みを言えなかったから、ツイッターでアカウントを作って、自分の感情を吐き出したりもしていた。でも、見ず知らずの人に「大卒で非正規は親が可哀想」や「死んだほうがまし」なんていう誹謗中傷をいっぱい受けた。

そんな言葉気にしなくていいのに、今まで頑張ってきたことが無駄になると思うと、内定を貰えないと人間として認められないという思考に変わってしまった。

「自分は鬱病かもしれない」と思うようになった4年生の冬に、アルバイトに向かう電車の中で涙が止まらなくなってそのまま精神科に向かった。
先生に泣きながら話した後、「鬱気味の不安障害」と診断され、薬を処方された。

私の人生は私のもの。概念にとらわれず、自分のために生きていこう

それから、私は就活をやめた。求人を検索することをやめ、履歴書やエントリーシートを書くのもやめた。好印象のエピソードや絶対受かる面接の極意も、もうどうでもいい。就活関連のサイトやアプリも全部削除した。

私を縛っていたものから解放され一気に心が軽くなった。

私は世間一般のレールから外れ、フリーターとして好きなように生きていくことを決めた。面接で周りの学生が述べていた、内定を貰うためだけの偽りの夢のためではなく、今、純粋にしたいと思える語学の勉強をして資格を取ることや、未経験の飲食のアルバイトで料理を作れるようになること、行ったことのない場所に旅行に行くことなどのために。

「大学を卒業して正社員」という概念にとらわれることなく、私は自分の心の中にある軸で自分のために生きていこうと思う。たった1回きりの私の人生は誰のものでもなく私のものであり、他人に指図されるべきものではないのだから。

そして、新しいスタートはいつ始めてもいいのだから。