特集:「あの子」がいたから

私には親友がいます。その子はかつて、私をいじめていた人でした

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私には親友がいます。その子はかつて、私をいじめていた人でした。

いじめとは、相手に精神的・身体的損傷や苦痛を与えることである。苦痛の受け手となる本人がそれ自体を“いじめ”と認めることによって、その行為は“いじめ”になる。辞書的に説明すれば、このようになるのだろうか。

中学生の時バレー部に所属して、私はクラスでも部活でも明るかった

私は中学生の時にいじめられていた。とはいっても、私の受けたいじめは学園ドラマや漫画で扱われているような、ほこりを食べたり水を頭からかけられたりするような残酷なものでも、私物を隠されたり学年全員から無視されるというような冷酷なものでもなかった。

単に一定期間の間、部活内で口をきいてもらえなかっただけなのである。もっとひどい仕打ちを受けたことがある人からしたら、可愛いものかもしれない。しかし、その当時の私にとって、なぜ部活内で空気のような扱いを受けるのかは疑問だった。

私の通う中学校は、市内でも治安が良く真面目な校風が有名で、いじめなど聞いたことがなかった。私は運動が好きで、身長も高いのでバレーボール部に所属し、クラスでも部活でも明るいタイプだった。友達も多かったと思う。

私は何か一つのことに向かって仲間とともに努力するのが大好きで、そのような環境が整った部活を毎日楽しんでいた。私の部活の同期は6人、決して多くはないが、とても仲が良くつらい練習も遠征も一緒に乗り越えられた。しかし、運動部の負けず嫌いな性格が、時として合わないことは多々あった。

部活内で次々とターゲットを変え、「いじめ」が起こっていた

先輩の引退が近づき自分たちの代が迫ってきたある日、突然あるメンバーが他のメンバーとは全く口をきかずに、淡々と練習や準備片付けをしているのを見た。いつも明るい彼女が暗く見えたのを疑問に思った私は、彼女に声をかけた。すると、彼女は笑顔で「私に話しかけないほうが良いよ、ハブられるから」と言った。

後々聞くと、最初のターゲットは彼女だったようだ。私はそのような無意味で、誰かを傷つけるような行動が本当に理解できず、彼女を置いていく意味もないので普通に接していた。その中で、私をわざと彼女から離そうとしてきたYに少し嫌悪感を抱くようになっていた。

ある日部活に行くと、ハブられていた彼女がみんなの輪の中で、楽しそうにしているのを見た。私は一安心して、やっとみんなで仲の良い雰囲気を取り戻せる、そんな風に思った。内心ほっとして部活に向かうと、驚くべきことに私の存在は空気と化し、誰にも反応してもらえなかった。全員に無視されるだけで、こんなにも辛いのか。その時に自分は、“いじめられる”ことを体験した。

特に陰湿だったのはYで、私が近づくと笑いながら避けたり、私が話していた先輩にわざと声をかけて、私が必然的に一人になるような状況をつくったりしていた。実際に体感した当初は本当に悲しかったが、幸いなことに私の先輩やクラスの友達は普通に接してくれて、むしろ「いじめられる理由がわからない」とまで言ってくれた。

不思議と私にも似たような感情があり、悲しい辛いというような感情よりも、理解できないわからないという思いの方が強く、相手のことを憎いとは思わなかった。そこまで思いつめることもなかったので、自分の方が精神的に大人だったのだと思う。しかし、そのいじめはわずか1か月でぴたりと止んだ。練習試合で、チームとして団結できたからなのかな。

いじめをしていたYは、「いじめ」をしている自覚が当時も今もない

Yは勉強も運動も得意だった私を尊敬してくれて、この試合の後からたくさん話すようになった。Yとは毎日帰り道が同じ方面だったので、他のメンバーよりも話す機会も多く、お互いに何でも言い合えるようになった。

会話を多く交わしていく中で、私はYが可哀そうだと思ってしまった。自覚なく人を傷つけ、それを平気で繰り返していることに気づいていない。Y自身がいじめを行っていた自覚は、今でもない。

しかし、Yの人間的弱さを感じたからこそ、彼女の素直な気持ちを応援したいと思うようになる自分がいた。私が現在、他人に対して開放的で誰でも認めることができる、協調性のある性格にしてくれたのは、Yのおかげかもしれない。

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