私は新卒で入った会社で、2年間必死に働いてお金を貯めた後、夢だったワーキングホリデーに挑戦した。

といえば聞こえがいいが、実際はストレスやら何やらで、仕事を続けていくことが嫌になり、「やってみたいな」くらいの気持ちでいたワーキングホリデーを退職の理由にすることを思いついただけにすぎない。

ワーホリ先の国は、雨が嫌いな私にとって「天気」が不安要素だった

ヨーロッパ西部の小さな国。学生時代に短期留学と旅行で2回訪れたことがあるその国を、ワーキングホリデーの行き先に決めた。3度目にして、初めての長期滞在。私はその国の景色と音楽がとても好きでワクワクしていたのだが、一つだけ懸念点があった。

そこは年間を通して、雨の日が多いのだ。そして一日快晴という日が少ない。太陽がまぶしいかと思えば5分後には大粒の雨、その雨が10分ほどで止み、再び太陽が顔を出す。そんな感じで、一日の間にめまぐるしく天気が変化する。

でも、朝から雨が降っている日は大抵、一日中ずっと雨。特に冬場は、雨か曇りの日が多い。雨が嫌いな私にとっては、大きな不安要素だった。

だって子どもの頃から、雨にいい思い出なんてない。バイトに遅刻しそうなときのゲリラ豪雨とか、バスの中で見知らぬ人の傘によって制服のスカートを濡らされたこととか、しばらく放置せざるをえなかった濡れた靴下が発する臭いとか、雨にまつわる嫌な記憶はすぐに思い出せるのに。

落ち込んでいても、雨が降ったあとの虹を見るとテンションが上がった

案の定、最初はとても嫌だった。せっかく晴れていたのに急に雨が降るなんてと、毎度律義に落ち込んだり、朝から雨の日は徒歩での出勤が億劫になったりした。

また、疲れがたまっている日に冷たい雨が降ると、逃げるように退職したことを思い出してしまうこともあった。みんなが頑張って働き続けているのに私は逃げた、好き勝手やっている自分はこれでいいのかという、マイナスな考えが浮かんだ。

数ヶ月ほど経った頃からだろうか、雨が降っても気分が沈まなくなった。雨の後にはほとんど毎回、きれいな虹が出現することに気づいたからだ。なぜか、私は虹が大好きで、虹を見ると無条件にテンションが上がる。嬉しくなって、普段はあまり起動させない携帯電話のカメラで何枚も写真を撮る。急な雨には「あ、虹が見られる!」、朝からの雨には「もし夕方に止んだら、虹が見られる」と思うようになった。

雨の後には虹が架かる、これは子どもの頃から知っている現象ではある。しかし、その国は日本よりも虹の出現率が圧倒的に高いように感じたため、私の人生で初めて、こんなにも強く“雨の後には虹が架かる”ことが心に刻まれたのだと思う。

人生の雨の日のあとは、気持ちが晴れる「虹が架かるとき」が必ず来る

私は今、日本で働いているが、帰国後の転職活動中は正直とても怖かった。また仕事が嫌になって逃げたくならないだろうか、ちゃんと働けるだろうかと不安だった。

その中で支えになってくれたのは、雨と虹の記憶。仕事の調子が悪いときや物事が上手くいかないとき、気持ちが落ち込むときは、きっと人生のうちの“雨の日”。そのあとには、たとえいつになるか分からなくても、いろいろ上手くいって気持ちが晴れる“虹”が架かるときが、必ず訪れる。そう考えるようになってからは、怖さや不安は小さくなった。

ほぼ毎回、虹が出現するあの国と違って、日本ではなかなか虹は現れてくれない。それでも以前より雨への嫌な気持ちは確実に減った。「あぁ雨か嫌だな…」が「雨だ、虹出るかな!」になったといえば、どれほど雨への気持ちが変化したか分かってもらえるだろうか。まあたまに、「私が出かけるときには降らないでくれ」という自分勝手な気持ちが生まれることもあるのだけれど。

昔は嫌いで、嫌な思い出しかなかった雨。今は、大好きな虹が見られる合図、私を支える記憶の一つだ。