初めてアイドルを好きになった1年後、解散が決まった

私は子供の頃から、人の顔を覚えるのが苦手でした。相手を見る時、目ばかりを見てしまうので、顔の特徴が覚えられなかったのだと思います。
人間として不器用でした、今もあまり変わりはありません。クラスメイト、近所の人、たまに会う親戚の顔もさっぱり覚えられずに写真で見かけては、こんな人いたっけなぁ……と思うくらいだったので、テレビの向こうの芸能人に関してはさっぱりでした。
タッキー&翼の滝沢秀明さんとKinKi Kidsの堂本光一さんが同じ人だと思っていたくらいです。金色の長めの髪で、王子様みたいな人、隣にいる人が見るたびに違うけどなんで?と親に聞いて、首を傾げられたことを覚えています。
そんな私も成長するにつれ、周りの女子に混ざって男性アイドルの話をすることはありましたが、顔が覚えられないのも勿論、画面の中に人がいるということがどうしても上手く捉えられずにいました。
テレビという二次元の画面で、三次元の人間を見るのが苦手だったのだと思います。テレビ画面の中で動く人間を見るのが下手という、人には説明しづらい理由でした。画面が大きすぎてどこを見ればいいかわからずにいる間にアイドルは動くし、カメラも切り替わるし、歌うし踊るし、忙しいな!と思っていたらもう終わっているのです。
そんな私は去年の自粛期間にパソコンでYouTubeを見ていた時、男性アイドルのライブ映像が公式で配信されているのを見て、あっという間に虜になりました。
男性アイドルのパフォーマンスが美しかったのはもちろんそうですが、テレビではなくパソコンの近くて小さな画面で見たことにより、自分の視野の中に全てが収まりどこで誰が何をしているのか一気に理解できるようになったのです。そこから私の短くも濃いファン生活が始まりました。
まず、公式が配信しているミュージックビデオ、CDの特典、ライブ映像を見ました。ファンレターを書きました。ファンクラブに入り、欲しいBDやCDを買いました。表紙の雑誌を買い、感想を送りました。出演情報をチェックして片っ端から見ました。とてもとても、充実した日々でした。
コロナ禍、外に出られずピリピリしている中で好きなものがあるということは、大きな心の支えでした。今までよく分からなかったものを美しいと思ったり、知らない音楽を知れることで世界が広がりました。
毎日、このグループを好きになれて良かったなと思って、疲れた日にはきっと彼らも頑張っているだろうなと乗り切りました。多分、私と同じ思いのファンは沢山いました。
グループの解散が報告されたのは、好きになってからおよそ一年弱だった頃でした。
驚きましたが、意外ではありませんでした。私の知る彼らは、アイドルという仕事をするには不器用なほど誠実で真面目だったからです。いつかこんな日が来るだろうと、好きになった瞬間から覚悟していました。ですが、寂しいことには変わりありませんでした。
私が彼らを好きだった時、世界は去年までとガラッと変わっていました。手洗いうがい、マスク、ソーシャルディスタンス。自粛の日々、ニュースを見ては憂鬱になる、そんな落ち着かない合間に存在した楽しみは段々と疲弊していく自分を癒してくれました。どんなに疲れていても笑えたり、綺麗だなと思えるものがあることに安心しました。
何かを好きになることの楽しさを、豊かさを教えてくれた彼らとコロナ禍の一年を私は忘れないだろうと思います。とても充実した日々でした、そしてこれからもあと少しだけその時間は続きそうです。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
恋愛やキャリアなど個人的な経験と、Metooやジェンダーなどの社会的関心が混ざり合ったエッセイやコラム、インタビューを配信しています。