学歴なし、安定した職にも就いていない私が何で生計を立てているかというと、投資信託と株式投資だ。

なんてことはない、貯めたお金を突っ込んで増やして、増えたお金をまた突っ込んで増やしてそこから生活費を捻出している。

いざ、勝負。「へぇ、初めて聞いた~」と相槌を打ち、情報を聞き取る

ほとんどの作業はネット証券で行なっているが、プロの話を聞きたくて実店舗がある口座を動かしていたりもする。課長、部長、私はどちらが偉いのかすら分からないが、親と同じくらいの年代の人に「始めたばかりでよく分からなくって、教えてもらえますか?」と切り出すのだ。
なにせ口座に金だけはあるものだから、搾り取るだけ搾り取ってやろうという気満々の証券マンは丁寧に相手をしてくれる。

だけれども、こちらは窓口でやり取りするたびに無駄な手数料が発生する店舗がある証券では元々動かす気がないので、そこを上手くかわしつつ、情報だけ聞き取る作戦だ。
いざ、勝負。

まずは手始めに株式投資や投資信託の話をサラッとする。相手に詳しく説明してもらって、「それは知ってます!」とか、「へぇ、初めて聞いた~」と相槌を打ち、食いついてきたところに反応する。

「ここを知らずにお金を動かしてたの?たいした度胸だね。どんな利回り?」と聞かれるので、そこそこ利益率の良かった場合を提示して、どこの情勢が気になるか、情報源はどこかなどの話を軽くし、少しは株式や投資信託を知っていますよ、と提示する。

何も知らない小娘のように振る舞い、資料を見て解説をもらう

だんだんとテンションが上がってくる証券マンに、「で、今回は何をご相談に?」と聞かれた際に「このインデックスファンドを買おうかなって。これくらいの値段」と何も知らない小娘のようにハイリスクハイリターンの商品を伝えれば、にっこり笑った社員さんが「分かりました、じゃあ資料取ってきますね」と言って一つ下の役職の部下を呼び、横で説明させるのだ。

部下の人が来るまでの間、偉い人は「お客さん、私が相手でよかったですよ。これだけのお金を持ってたらね、搾り取られるからね」と言う。私はなかなか愉快な気分になりながら、「はい、ここで教えてもらって本当に良かったです」と答えて、たくさんの資料を好きなだけ見せてもらって、解説をもらうのだ。

無論、自分のお金を動かすのは自分なのだから、その商品がどれくらいのリスクを伴っているかはわかるが、数字としてのここ最近の動きはネットでは調べきれない。
ここ一年、五年、十年の動きを見せてもらって、下がった時期に何があったか、顧客はどう動いたかを聞き出す。

女は度胸と愛嬌。私はこう見られているんだろうなと意識して振る舞う

最後にしおらしく、「うーん、でも、大きなお金を今動かすかはちょっと……」と悩んでみせれば、「家に帰ってゆっくり検討してくださいよ、でも××には大きな選挙があるのでそれまでに買った方がいいですよ」と一番聞き出したかった情報を得て、退店する。私の知りたいことを全て知れて、終わりだ。

営業と客、男と女、大人と若者、立場が複雑に絡み合って、お互いに見た目通りスタンダードな人物像というのを作り出すのがビジネスの場であるから、私はこう見られているんだろうなと意識しつつ振る舞う。

女は度胸と愛嬌だ、しみじみそう感じて帰宅した私は、ネット証券で商品を買う。