近頃の私は反抗期だ。人を責めず、自分を責めず、真っ当に、清く正しく生きていくことが私のモットーであるけれども、性根が腐っているのでなかなか理想通りにはいかない。
そういう時、溜まりに溜まったストレスは予想外の行動をなんの考えもなしに試してみる、という半ば博打のような行為によって昇華される。

平日の朝7時。手軽にスマホを操作してテレフォンレディに登録した

今回はそれが「テレフォン・レディ」という仕事だった。
テレフォン・レディとはなんだか知っているだろうか。
私は人と喋ることが好きなので、電話するだけでお金がもらえるなら楽しいし、お小遣い稼ぎになるしいいのでは?と思って登録した。

スマートフォンのボタンをぽちぽち押していればすぐに登録できる。そうすると会社の方から仕事内容についての説明の電話がかかってくるのだが、平日朝の7時という時間に登録したのに即座に返事が来たのには驚いた。

この時点で、電話の向こうの会社員は24時間体制で張っているんだろうか、大変だなという感想を持った。

男の社員の方は大変丁寧で、というかむしろ丁寧すぎるくらい丁寧で、喋り方や私を持ち上げるような口調にキャバクラの黒服の男性を思い浮かべた。
あ、これはもしや、「おはようございます、朝いい天気ですね」みたいな会話をする仕事ではなく、半ば風俗のようなものなのか?と遅まきながら気づいたのだが、社会経験の一つだと思ってそのまま説明を聞いた。

知らない世界を知るワクワク感。待機していると、電話が繋がった

「ノンアダルトはできますか?」と聞くと「あのですね、えーっと……9:1くらいの確率でお客様はえっちなお話を求めているので、そこを上手くかわすことができれば……」と大変誠実な回答をいただいた。

電話でえっちなことを求める男性ってなんだ?と、これまで生きてきた人生で確実に関わったことがないであろう世界に踏み込むワクワク感しかなかった私は、「じゃあ試しにやってみます!」と朝の7時らしく元気よく返事をし、専用のアプリをインストールし、男の人からの電話を待った。

何を喋るんだろう?朝だしそんなにセクシャルなことを求めてくる人っているのかしら、ぼんやり考えながらコーヒーを入れて待つこと数分。名前も顔も年齢も知らない男の人との電話が繋がった。

「こんにちは~」
と電話に出たら切られた。
なんでやねん。私は割と人当たりが良い方だと自認しているので、こんにちはの一言でぶつ切りされるのが続いてだんだん腹が立ってきた。

登録から退会までの所要時間は3時間。私の悩みなんてまだまだ小さい

この人たちが普段、この電話で話しているレディたちはどう対応しているのだろう。次こそは相手からの返事を引き出してやる、と思いつつ何回目かの電話を取れば、やはり黒服じみた社員の男の人が言っていた通りえっちなことしか頭にない男性と繋がった。

詳細はあまりに憐憫を誘う悲しいものなので省くが、レディと1分電話をすると男性側に料金が発生するため、その男性は58秒で切るのを3回繰り返してきた。せこい、せこすぎる。
そんなんだからテレフォン・レディ相手にそんなことをする大人になってしまうんだ。

そう言いたい気持ちをグッと飲み込んで、私はアングラな世界にもう大体満足したのですぐに退会した。登録から説明を受け、電話対応をし退会するまで3時間の出来事である。
正直、ストレス解消にはなった。なかなか体験することがないことを経験できたし、世の中広いな、私の悩みなんてまだまだ小さなものだ、と思うことができた。

テレフォン・レディ上級者のお姉さまに電話をかけて、どう対応するのが電話を長引かせるコツなのか聞きたいと思ったが、その道を極めた先には何かまた新たな邪の道が待っている気がするので、私の好奇心はこの辺りで仕舞い込むことにする。
かがみよかがみユーザーには無論、お勧めしない。別に楽しくも稼げるわけでもないからだ。