遠距離恋愛は別れやすいといわれる。でも私は、コロナ禍での恋愛経験を経て、そんなことは決してないということに気づいた。

これから遠距離が始まって不安な人、今まさに遠距離をしていて寂しい人にこの経験と気持ちを伝えたい。

彼がコロナの影響で母国に帰り、「遠距離」になると思うと不安だった

遠距離が別れやすいといわれる大きな理由の一つは、物理的な距離が心の距離も生んでしまい、寂しさに耐えられなくなったり、相手のことを信じられなくて気持ちがすれ違ったりすることだと思う。

この「遠距離はうまくいかない」という考えは、定型文のように日本に広まっているから、これまでは私も根拠なくそういうものなのかなぁと思っていた。そんな私にコロナのパンデミックが始まる前に彼氏ができた。

彼は外国人で、コロナの影響で、帰国するか日本に残れるか分からない曖昧な時期が数か月も続き、当時は夜も眠れないくらいとても不安だった。付き合ってすぐに遠距離になったら、お互い気持ちが覚めてしまうんじゃないか、これから親密な関係性を気づいていくことが難しいんじゃないかと思った。

そんな不安を口にした私に彼は、「何年間もきみと会えなくても、君のことを思う気持ちの大きさは全く変わらないよ」と言った。そんな人いるのか? と正直信じられなかったし、そんな考え方の人がいることに驚いた。聞いてみると彼は、友達に対しても家族に対しても誰にでも、何年も会わなくても、最後に会った時とずっと同じ気持ちでいるそうだ。

彼は小さな事にも忠実な人で、私の事も「大切」にしてくれると思った

付き合いが長くなり、彼の考えをより知っていく中で、遠距離でも私をずっと愛してくれるというその言葉を、確信をもって信じることができるようになった。そう思えるようになった彼の行動や態度はたくさんあるが、例えば、犬への態度がある。

彼は犬が大好きで、母国でも犬を飼っている。しかし、ペットショップなどに行っても、決して犬を撫でない。私が撫でても、一緒に撫でようとしない。

私がなぜ撫でないのか、犬が好きではないのかと聞くと、「犬は大好きだけど、触らなくても愛でることはできる。それに、自分の犬以外は撫でたくない」と言う。犬が見知らぬ人に触られることに慣れると危険だから、飼い主でない自分が触るのはよくないと思うという理由もあるそうだが、外国にいてもずっと自分の犬のことを思う気持ちと、犬にとって大事なことを考えて、自分のしたいことを抑えるその一途さと忍耐力を見て、なんだか欲望に忠実な自分が恥ずかしくなった。

聖書に「小さい事に忠実な人は、大きい事にも忠実である」という一節がある。ささいな約束や規則を守れる人は、大きなことも守れる。逆にいえば、小さな約束だからといって約束を守らない人は、より大きなことについても信用ならないという意味だ。

彼は正に、この“小さな事にも忠実な人”だと思う。一緒に犬を愛でて楽しんでくれないことなど、ノリが悪いなと思うこともあるけれど、それも視点を変えれば、こんな小さいことでも忠実に大切にするなら、私の事だってずっと大切にしてくれるという信頼に変わる。

タイタニックを観て、人生をかけて、愛する誰かを愛する気持ちを学ぶ

そんな彼が今年になってコロナにかかった。幸いなことに症状は軽症だったが、病院に入院しており4週間会うことができなかった。病院では感染を防ぐために話すことができず、電話もできなかった。彼が疲れやすくなっていて、寝ている時間も多かったので、必然的に私たちのコミュニケーションは、一日数回のメールだけになった。

その短い文の中から出来る限り相手の状況を想像して、お互いのことを考えていると伝えあった。彼が母国にいて時差ができ、物理的にあまり話せなくなったら、こんな風になるのかなぁ……と思った。

無事4週間後に退院して、久しぶりに会えた時は心の底から嬉しかったけれど、入院中もお互いへの思いは何も変わらなくて、愛の大きさは本当に変わらないことを知る良い機会になった。

彼が退院してから、映画「タイタニック」の再放送を一緒に観た。これまでは古臭い映画という印象しかなかったが、彼との出会いやコロナ禍での恋愛経験を経て改めて観ると、この映画の意味や良さがものすごく分かるようになった。

ご存知の通り、主人公とヒロインが、タイタニック号の中で初めて出会って恋をし、最終的に主人公がヒロインの命を守って死ぬ。年をとったヒロインは、生存者の一人として、当時タイタニック号で起こった真実を記者に語る。語り終わって一人になったヒロインは、主人公が眠る海に、もらったネックレスを投げ入れる。そしてベッドに行くと、彼女の人生が走馬燈のように流れ、眠るように息を引き取って物語が終わる。その走馬燈を観るかぎり、おそらく彼女はタイタニック号から生き残った後、誰かと結婚をし、子供もできたことがうかがえる。

これまではこの映画のメインは、主人公が船の甲板でヒロインを後ろから抱きしめているあの有名なシーンだと思っていた。しかし、改めてこのシーンを観ときに、本当に重要な部分は、ヒロインが主人公にあの世で再会するまで人生を全うするという使命を、一人でひたすら貫いてきたその姿そのものなのではと思った。

結婚相手や子供たちも大切な存在だが、彼女が最初から最後までずっと思っていたのは、主人公ただ一人だったのではと思う。彼が救ってくれた命をしっかりと全うするという約束・使命を胸に、幸せな人生を生きぬき、最後に心残りなく、一番大切な彼のもとに行くという彼女の“長い”人生が見えた。

それをとき、私は古臭いと思っていたタイタニックで初めて号泣した。あまりにも彼女の気持ちが分かったからだ。タイタニックはある意味、究極の遠距離恋愛を描いていた。生きている限り会えないレベルの距離にいて、時間の長さでいえばヒロインの人生すべてをかけて、愛する誰かをずっと想い続けていたのだ。

だから、もし今遠距離で悩んでいる人がいたら、究極の遠距離恋愛映画であるタイタニックを観てみてほしいと思うし(笑)、愛する気持ちが変わらない恋愛は、確かにあるのだということを伝えたいと思う。