通勤電車で感じる、心臓がきゅっと小さくなる感覚。気づかないフリして走り続けた

私は、最近になって、うつ病であることが発覚した。
自分がうつ病とは、想像もしなかったことだった。
それは、今まで気持ちが比例して体調に出るなどといったことは経験がなかったからであり、知人からそういった話を聞いても、知人の体験談としてのみ私の頭に強い印象を残していたものだったためだ。
私の症状としては、会社に行く途中、電車の中で心臓がきゅっと小さくなるような感覚に襲われることが頻繁に起きた。呼吸は確かにしているのだが、心臓に穴が空いているんじゃないかというくらいに息が吸えなかったり、苦しい。
そんな症状が続くようになり、両親に相談してみると、狭心症かもよ、という返答。
私は恐る恐るメンタルクリニックを予約し、試しに話を聞きに行ってみることにした。
最初は心臓が痛くなること、呼吸がしづらくなることを先生に打ち明けた。
そのあと、少しずつ、ぽつりぽつりと、先生が質問することに答えていった。
心臓が痛くなるとき、うまく息が吸えなくなるときは電車の中や、職場が多いこと。
人が多いところや上司と顔を合わせる瞬間に陥ることが多いこと。
よくみる夢のこと、1日に1度は蘇る記憶のこと。
感情が抑えられず、怒りを人にぶつけてしまったこと。
自分が前職から、人間関係から、逃げ出したこと。
そうして、結果はうつ病。いわゆる適応障害が発覚したのだった。
その日から先生に言われたとおり、お酒をやめた。
そして夕食後と就寝前に処方された薬を飲んだ。毎日欠かさず。
お酒をやめてから気がついた。
毎晩ちゃんと眠るためにお酒を飲んでも、次の日の朝は目覚めも悪く、決まって気持ちがどん底に落ちていること。
心が弱っていればいるほど、お酒を飲むとハイテンションになること。
楽しくなりたくて、忘れたくてお酒を飲んでも、決して忘れられないということ。
決して、楽にはなれないということ。
薬は実際、よく効いた。
心臓の痛みは発生する頻度が格段と減った。
寝る前の睡眠薬により、夜はよく眠れるようになった。
というより、眠れないのではないかと不安に陥ることがなくなった。
そしてなにより、これで良かったんだと、そう思った。
私が歩みを止めたとき、だった。
本当は、どこかで分かっていた。
前職から離れたとき、いや、もっと前。仕事がうまくいかなくなったとき。
売り上げが上げられない成果が出せないイコール自分の頑張りが、価値が、認められていないと悟ったとき。そうして職場の人間関係がうまくいかなくなったとき。
それでも、へらへら笑っていたとき。
気づかないフリをした。走り続けた。
もうとっくに、壊れていた。
私はその日から、前職の人とまだつながりがあったSNSを断った。
思い立って、そうする決断をした。
自分を求めてくれる場所にだけ、自分の身を置こうと思った。
自分を愛してくれる人とだけ、一緒にいることにしようと。
理想も執着も、もう私には必要ないから。
そして、不安定になってしまった心の波も、ごまかさずに受け入れることにする。
心臓が痛くなったら薬を飲むし、今夜眠るためにも薬を飲む。
私はやっと、歩みを止めた。
もう止まっていいよって、つらかったねって。
やっとだった。
そうやって止まってみて、右よし、左よし、前方よし。
安全確認してから、もう一度歩き出してみる。それでもいいと思った。
今度は安全運転でいく。だれがなんと言おうと安全第一でいく。
過去にありがとうをして、さようならをして、
きれいさっぱりと、私は再び歩き出そうとしている。
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