25歳から1年間書き続けたエッセイを本にして、旅立たせてあげよう

この度、かがみよかがみに掲載していただいたエッセイをまとめて本にした。自費出版の本を今はZINE(ジン)と呼ぶらしい。マガジンの「ジン」だ。
自由な形態で作ることができ、主に即売会などで販売する。ZINE専用の本屋さんなんかもあって、最近は出版に対するハードルが下がったようだ。
自己表現の一つとして本を作るということがスタンダードになるならば、それはとても良いことだと思う。誰だって自分のことを外に向けて表現する機会があって良いはずだ。
たとえそれがものとして未熟であっても、その時にしか作れないものだから、それは紛れもなく私の作品だ。だから私は本にした、今の自分を残しておくために。
遡ること去年の9月から今年の7月まで、毎月1本を目指して書き続けていたエッセイだが、随分溜まってきたなぁと数えてみれば39本もあった。かなりの本数だ。それに書き下ろしの5本を加えて、全44本をエッセイ集としてまとめることにした。
44、不吉な数字が二つ並ぶというなんともいえない本数だけれど、四合わせ(しあわせ)と読むこともできるから良しとしようと後から決めた。
記事をまとめてまず考えたのは、そのままの記事を本にするか、加筆修正して今の自分の文体に合わせるかだ。39本を一から手直ししていたのでは時間がかかるし、全部が全部今の自分もそう感じているかと聞かれたら5割程度のエッセイは「なんか違うな」と思うものだ。
若いし青い、今の私なら書かないであろうテーマだったり、文体だったり、オチの付け方だったりする。それを書き直したらもはや全く違うものになってしまう気がしたし、私は25歳から26歳までの自分の定点観測のつもりで本を作りたかったから、誤字脱字や縦書きへの変更程度に留めてなるべくそのまま載せるようにした。
これがなかなか嫌というか、小っ恥ずかしいというか、やりたくない作業だった。特に初期に書いたエッセイなんかは今の私の考え方とは全く異なっており、この恥を世に出すのか? わざわざ? 本にして? と何度も書き直したい衝動に駆られた。
だけれども、本の前半から後半にかけて文体が落ち着いてきたり、考えることや伝えたいことに一貫性が出てきたりするのは、まさに私がやりたかった自分の定点観測そのもので、その点では非常に満足できるものになったのは間違いない。
原稿のフォーマットや表紙の作り方は、同じようにZINEを作っていた先人の知恵をお借りした、Google先生さまさまだ。機械音痴の私には難しい作業ばかりだったが、紙の材質から文字のフォントまで自分で決められるのは楽しかった。
もはや本を作るというより、自分だけのアート作品を作っている感覚だ。書店に並ぶものでもないし、読みやすければあとは自由。自分が作りたいように作ったものが形になった時のわくわく感を大人になってから味わうのはひさしぶりだった。
でき上がったこの本を色んな地域に旅立たせようと思っている。私のことを知らない人しかいない街へ、本だけが旅をしたらいい。そこで誰かのこころを揺らすことができたら、と想像する。
それは考えるだけで夢のような、とても素敵なことのように思えた。
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