今から1年くらい前に専門学校を卒業した私は、地元に戻ってきた。就職はしなかった。

1度面接をしてもらったが、その時言われた「違うテイストでもう1冊(作品集)持ってきて」。最初にあった気持ちと自信は、「これ(私の作品)じゃダメなんだ」と、日に日に失われていった。

元々考え過ぎる性格で、自分の全てがダメなんだと思い始めた。

専門学校卒業後、就職はせずに実家に帰った私はいづらかった

そこからは早かった。まず地元に帰る選択をした。両親は、分かったとただそれだけだった。

戻った実家は、ぽかんと穴が空いているようだった。姉妹はみんなそれぞれ就職や学校で外に出ていて、家を出る前の賑やかさはもうなかった。就職しなかったという事実が尾を引いて、今までずっと家にいづらいなと思っていた。

早く1人暮らしがしたかった。そんな気持ちの中、私は父と大きな喧嘩をした。きっかけは本当に些細なこと。おばあちゃんの家でご飯を食べている時だった。

たくさんの料理が並んでいたテーブルには、私がバイト先で貰ってきたお弁当もあった。みんなで食べようという話だったが、誰もお弁当には手を付けていなかった。貰ってきてしまった責任があると思い1人で食べ始めた。これまでにないくらい、たくさん食べていた。

ちょっとしんどいなと箸を置いた時だった。「お前いつも残さず食べるのに、それだけは残すのか?」という父の言い方にカチンときた。ここからは意地の張り合いで、「食べればいいんでしょ」と無理矢理詰め込みはじめたのを、もういいよと止めはじめた。

元々何となく父が苦手だったこともあり、とっさに「だから嫌なんだ」と言ってしまった。特にそんな深い意味はなかった。父はここでキレた。コップが飛んで、割れた。

私は就職し世間話をしていた時、ある人に言われた言葉がショックだった

次の日の朝、顔を合わせるのも嫌だったが話し合った。父も色々考えていた。帰ってこれるような家にしたいとかそんな話をしてた。私は1人暮らしがしたくて「だから嫌なんだ」とは言っていないけれど、そのまま話が進んだ。とりあえず仲直りができた。本当に安心した。

この件があってから喧嘩は1度もしていない。私は何も言えなくなった。ただ就職していない自分に引け目を感じていた。

そんな私は、今年から工場で契約社員として働き始めた。今まで経験のない仕事をしたくて応募してみたのだ。面接はさらっとしたもので、あっさりと合格をもらった。

私の部は年齢層が高めで、時に世間話に花が咲く。若い人は少なからずいるが、珍しいみたいだった。そこである人に言われた、「専門学校に行かせてもらったのに、その職に就かなかったのお父さんはショックだったでしょうね」。

それを言われたとき、今まで思っていた気持ちに追い討ちをかけられた気がした。泣いてしまいそうになった。

泣いてしまいそうな私の問いに、父は「温かくて優しい言葉」をくれた

家に帰ると両親はのんびりテレビを観ていた。今日あった事をぽつぽつと話しつつ、勢いで聞いてみることにした。「私さ、専門学校行ってから就職せずに帰ってきたけど、その職に就かなくてショックだった?」。ちょっと声が震えたかもしれない。一瞬涙目になったのを堪えた。

父は言った。「お前がやりたいことやってたらそれでいいぞ」そう言われて、やっとこの家の子でよかったなと思った。この両親でよかったなと思った。

地元に帰ってこなかったら、こんな事思わなかったかもしれない。自分のことがもっと嫌いになっていたかもしれない。少しだけ嬉しかった。

私が折れそうな時、温かく迎えてくれるここが、私の「帰ってこれる場所」なんだと思った。