私の初めての1人旅は思えば、何もかもが突然だった。
高校を卒業したばかり、大学の入学を控えていた春先だったと思う。
さて、何をして過ごそうかと考えていると、幼いころからの友人から電話がかかってきた。

友人と2人きりの旅行。楽しい時間を過ごすと信じて疑っていなかった

同じ習い事に通っていた、小学生からの気心しれた友人。
久しぶりの電話にお互いの近況を話し、大いに盛り上がり、そして気がついたらその電話が終わるころには彼女の提案で、2人で旅行に行くことが決まっていた。
反対すると思っていた両親もあっさりOK。とにかくあまりの急展開にとにかくドキドキしたのを覚えている。
友人と2人きり、私にとっては初めての保護者のいない旅行。しかも彼女は県を跨ごうと言い、更に出発は来週というスピードの速さ、交通手段は小学生以来に乗る夜行バスと来た。

あの日、荷物を抱えてワクワクしながら夜行バスが来るのを待つ間、心なしか世界がキラキラ見えた。何もかもが順調で、友人と2人。楽しい3日間を過ごすと信じて疑っていなかった私はきっと無敵だった。
だけど、どうやら旅行というものにはハプニングはつきものらしい。
突然「一緒に旅行に行かない?」と言い、心配する私に「私がいるから大丈夫だよ」と言って連れ出した彼女は、見知らぬ旅先の土地で「明日は別行動でもいい?」と次の日の宿の場所だけを告げて、あっさりと私の手を放してしまった。

「明日は別行動でもいい?」。彼女からの突然の提案

思えば最初からすれ違いの連続だった。
初日の目的は某有名アミューズメントパーク。だけど心なしか彼女の元気はなさそうで、必死に盛り上げようと頑張ったのを覚えている。
「なんでもないよ」と彼女は終始言っていたけれど、夜、昨日の夜行バスであまり眠れなかったのだと彼女は言った。頭に思い浮かんだのは正直に言ってくれれば良かったのに、という思い。

だけど次の日は移動日だから。今日きちんと休んだら、明日は一緒にもっと楽しく過ごせるかもしれない。そんな風に気を取り直して、明日の予定を立てていた時だった。
私たちが泊まったのは大部屋で、私は二段ベッドの上の段。下の段にいた彼女が言ったのは「明日は別行動でもいい?」という提案だった。
「え?なんで???」という感情で頭がいっぱいになっている間、顔が見えない彼女の「実は行きたいところがあってね」という気まずそうな声が聞こえてくる。
どうやら彼女の行きたい場所は少し辺鄙な場所にあるので、付き合わせるのは悪い。だから明日はそれぞれ移動と観光をして、ホテルでまた会って、明後日また一緒に観光をしよう、とのことだった。

行き当たりばったりは苦手なはずなのに、なんだかんだ1人でも楽しい

さあ、どうしよう。2人で旅行するつもりが突然、1人で旅行することになってしまった。不安より焦りが勝っていたので、必死になって次の日のスケジュールを組み出す方向に切り替えられたのは幸いだったと思う。
2人だったから行き当たりばったりの旅行でも楽しいと思って、あまりスケジュールをきちんと組まなかったのに、それがまさかの別行動に繋がってしまうとは。残念なことに私は1人のときの行き当たりばったりは苦手だ。

結局朝も別々に出発して、知らない街で初めての電車に私は一人で乗った。
正直、不安しかなかったけれど。ただ幸か不幸か、次の街は私が高校の修学旅行で行ったことがある場所だった。途中から知った街並みに気づいてからはその足取りは力強かったのだから、我ながら現金だと思う。
なんだかんだ1人でも楽しんでしまい、思ったより自分がタフな人間だった、というのは新たな発見だった。

思わぬ形で初めての一人旅をすることになってしまったけれど。そんな私は今は一人旅ばかりしている。

また旅に行けるようになったら、久しぶりに彼女を誘ってみようか。