特集:私が、だれかを切実に頼ったとき

頼ることは幸せなこと。遅咲きで出会えた頼れる存在は、私の生きる糧

私が、だれかを切実に頼ったとき

私が、だれかを切実に頼ったとき

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私は、人生において誰かを頼らずに生きてきたことはない。
仕事やプライベート、どんな時でも誰かを頼りに生きてきた。大人になった今では、誰かを頼り、必要としながら自分を保っていることがほとんどだ。嬉しいときには、同じ感情を共有したくて話をする。

悲しいときには、気持ちを少しでも楽にするために深夜の電話に付き合ってもらうことがある。自分のまわりの人たちに頼って生きていることを日々感じているのだ。それがたとえどんな些細なことでも、私はいつもこの世の終わりのような気持ちになって相談したり、話をしたり、時には感情をむき出しにすることさえあるのだ。
しかし、昔はそうではなかったのだ。

周りを気にして生きた幼少期、そして頼り方が分からくなった学生時代

幼少期は、誰かに頼ることができず、周りの顔を気にしながら生きてきた。
子どもながらに、迷惑をかけてはいけない、いい子でいなければならないという責任感があり、両親や友だちの顔色を伺っては、困ってもいない内容の話をして、「あなたのことを頼りにしています」という、なんとも気を使った形の頼り方をしていた。
その癖は簡単には抜けることもなく、少しずつ成長する過程で孤独の道を突き進むこととなる。

学生時代は、頼り方が分からなくなってしまい、同級生の顔色を気にしながらたわいもない話さえもできず、頼ることも頼られることもなく、うれしい気持ちも悲しい気持ちもひた隠しにしながら、相手が求めている言葉を投げかけるだけの空気のような存在としてその場にいた。
感情を思い切り出したいときでさえ、ただひたすら自分の心の奥にしまい込むような過ごし方をしていた。

大人になり遅咲きに出会った、手を差し伸べてくれる頼れる存在

そんな環境にいたからこそ、頼ることが苦手で一人で抱え込むことが多かった。誰よりも頼ることに臆病な部分と憧れがあったのかもしれない……。
そして、かつての同級生だった人たちも私を頼ることもなければ、気持ちの中に入ってくれることも決してなかった。
今の姿からは考えられないのだが、当時の私が頼れるのは自分しかいなかったのだ。

きっと、周りの人たちは、両親や学生時代から仲のいい友だちと、頼ったり頼られたりの「持ちつ持たれつ」の関係性を築いてきたのではないか。
そんな私にも大人になってからではあるが、頼れる存在ができ、困ったときや悩んだ時には、そっと手を差し伸べてくれる人たちに出会えた。誰かに頼るということがこんなにまで心地のよく幸せだと感じるまでに随分と時間がかかってしまった。私はこの先も遅咲きに出会った頼れる存在なしでは生きていけないだろう。
そして、今の自分では想像も出来ない経験や悩みを打ち明けるときが幾度となく訪れるだろう。幼少期や学生時代にできなかったあの感覚を大人になってから取り戻し始めているのかもしれない……。

この先も生きていく中で誰かを頼り、自分の存在を確かめていく

「誰かを切実に頼った時」というテーマを自分なりに考え書き始めたとき、「私はいったい誰を頼りに生きているのか」ということが様々なエピソードとして走馬灯のように浮かんだのだが、日常生活の中で、常に誰かを頼り日々を過ごしていることに気が付いたのだ。
そして、その一瞬一瞬が私にとっては、今世紀最大の悩みや悲しみだったり、時には喜びだったりする。必要としたときに頼れなかった時の遅れを大人になった今、取り戻すかのように毎日誰かを切実に頼って生きているのだ。

孤独の中で生きてきたからこそ、どんな些細なことでも頼ってしまうのかもしれない。
そして、この先も生きていく中で誰かを切実に頼りにしながら自分の存在を確かめていく作業を続けていくのだと思う。

生きている限り、どのような場面でも私にとっては誰かを切実に必要とし頼り続けていくのだと思う。何より頼ることは、幸せなことであり孤独から抜け出せたきっかけでもあるのだから……。

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