「好きなことを真っすぐに」。亡き祖母の教えが新しい夢になった

もし、今あなたに会えたなら……テーマを見た時、真っ先に思い浮かんだのは祖母でした。
祖母は、私が13歳の時に癌で亡くなりました。
明るく天真爛漫な彼女は、歌うことが好きで、よく車の中がライブ会場になるくらい二人で熱唱していました。また、おしゃれも大好きだった祖母のトレードマークである真っ赤な口紅は、どこか高級感のある化粧品の匂いに包まれ、誰よりも綺麗に感じる憧れの存在でした。明るく天真爛漫な彼女は誰からも愛されていました。
祖母との時間は本当に大好きで大切なものでした。
彼女と会うと化粧の仕方を教えてくれたり、素敵な服を着させてくれたりしました。ドライブでは、二人で歌いながら「世界で一番大好きだよ」と言い合うのが、私たちの恒例になっていました。私
が、化粧を好きになり、服を好きになったきっかけも祖母の影響です。
そんな、大好きな祖母が癌で私を一人残していきました。心にぽっかりと穴を残し、静かに眠る姿をひたすら茫然と見つめていたのを今でも覚えています。
13歳にして大きな悲しみと喪失感を味わい、二度と会うことのできない存在に私は、一生懸命語りかけました。返ってくるはずもない返事をひたすら待ち続けました。あの日から、私と祖母との時間は止まってしまった……。
あれから、ゆっくりと時は過ぎ、私も祖母のようにお洒落を楽しむ大人になっていました。しかし、祖母のことを忘れたことは一度もなく、交わすはずの会話の答えを待ち続けています。
そんな、彼女が昔から私に話していた言葉が2つあります。
「口紅と香水はいいものを使いなさい」
「好きなことを真っすぐ信じてやり続けなさい」
祖母の教えを未だに守り、大切にしています。だから、大人になった私は、香水も口紅も少し背伸びをして高いものを付けているし、仕事もやりたいことを真っすぐ信じて小さいころからの夢だった職業に就きました。
社会人になって、どれだけの月日がたったでしょうか……。
ふと、「自分はこのままでいいのか」と考えれば考えるほどわからなくなっていくことが増えていきました。
そんな時に、祖母の言葉を思い出したのです。
私は、昔から文章を書くことが好きでした。
それは、本当の自分を声にのせて伝えることが苦手だったから、文にすることしか方法が分からなかったのです。思いを声に出し伝えることができず、文字に起こすことで気持ちを整理していました。
だからこそ、私にとって書くという作業は、自分を出す唯一の方法でもあったのです。そんな昔の記憶を思い出し、この気持ちを何かしらの形で残すことができたならと考えました。
今までならただの趣味程度で終わっていたのかもしれない。でも、今回は夢として、新たにやりたいこととして、文字を書くことを決意しました。
あの日、祖母に言われた言葉を思い出し、今行動に移そうとしています。
もしも、もう一度会えることができたなら、「自分の信じた道を真っすぐ進み始めたよ」と伝えたい。いつの日か、エッセイストという第2の夢が叶った時、祖母のお墓に手を合わせ伝えに行こうと思います。
「ありがとう、世界で一番大好きだよ」と……。
止まった時が進み始めるのを確かに感じながら、いつか祖母に会いに行きたいと思います。
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