強まる焦り。マッチングアプリで出会った「救世主」に夢を教わった

私には、目標がある。それは今後の人生を大きく左右するものだ。同時に人生最大の夢でもあり、ロマンさえ感じるものなのだ。
一年前の今、私は夢も目標も見失い、今後の行く末に不安を感じていた。仕事も上手くいかず生涯をこのまま終えてしまうのかと考えることが何度もあった。自分の憧れの職業についてから、大きな壁にぶち当たっていたのだ。
毎日行くのが楽しくて仕方がなかった職場から離れたいと思うことが増えた。ましてや、周りは結婚ラッシュを迎え、一人独身街道を突き進んでいた私は、いよいよ見えない不安と孤独に恐怖さえ覚え始めていたのだ。
結婚もできない、仕事も上手くいかない。この先どうやって自分自身と向き合っていけばいいのかすら、分からなくなり始めていた。
しかし、仕事を辞めるわけにもいかず、毎日自分自身と戦いながら職場と家の往復をしていた。
そして、ふと頭をよぎった。
「このままで本当にいいのか」と。
そこから自分探しの旅が始まった。
沢山の人に会う機会を作っていった。知らない世界に飛び込もうとすることは、まさに冒険家のような気分でワクワクと不安が入り混じる、何とも複雑な心境であった。
しかし、会えば会うほど道に迷い、本当に自分がしたいことがわからなくなってしまったのだ。気づけば20代後半になり、焦りは深まるばかりだった。
「結局私のやりたいことは何なのだろう…」。
そんなことを模索しながら月日はあっという間に過ぎ去り、一年が経とうとしたある日、友人にこんなことを言われたのだ。
「あなたの今までの人生は、本になるほど濃くて面白い。せっかくなら文章を書いてみなよ」と。
しかし、文章など仕事以外で書く機会もなく、行動に移すことはしばらくしなかった。だが、この話が思いもよらぬ、救世主登場で好転していく。
それは当時、焦りから始めたマッチングアプリで出会った男の人とのやり取りから始まるのだ。
彼とは初め、たわいもない会話をするだけの関係だったのだが、妙に波長が合う人だった。趣味も考え方もよく似ており、時折共感できることが多く、仲良くなるのに時間は必要なかった。
そんな彼には別の顔があることを後々知ることとなる。それは、いつものようにたわいもないやり取りの中で、彼はおもむろに一つの詩を私に送ってきたのだ。
何とも摩訶不思議で、説明されても私には到底理解が出来ないものだった。しかし、読めば読むほど詩の中に引き込まれていくような感覚にもなったのだ。
すると彼は、「これ、僕が書いたものなんです。少し変わっているかもしれないけど、きっと良さに気づいてくれる人がいると思って、書き続けているんです」と言ったのだ。私は、思わず「私にも文字で誰かの心に寄り添えることはできますか?」と聞いていた。彼は、「書きたいものがあるのなら、伝えたいことがあるのなら君なりの文章で表現するべきです。きっと思いは伝わるはずだから」と答えてくれた。
ずっとしこりのようなものがあった。保育士としての日々ではなく、今自分がやりたいことは何なのか、そして夢を自問自答する日々の繰り返しだった。遠い記憶ではあるが、小さい頃に祖母のパソコンで日記をつけていたのを思い出したのだ。
当時のやるせない感情や誰にも伝えられなかった思いを、画面にただひたすら書き綴っていたあの頃を。彼と出会い詩を読んだ時、自分の進むべき道が明確になり始めたのかもしれない。それから、行動に移すのに時間はかからなかった。心に秘め続けていた思いを文字に起こしていく。自分でも驚くほどに一瞬一瞬の感情に真剣に向き合っている。そして、友人の一言で何かを目指すきっかけになり、マッチングアプリの彼との出会いが、新たな夢を確かなものにしてくれた。
今まで感じたことのない希望とこれから始まる夢への冒険心は、一人でも多くの人に寄り添える文章を書いていきたいという目標へと変わっていくのだ。
いつか、サイン会を開けるほどの有名なエッセイストになるその日まで。私は、新たに掲げた目標を胸に一歩ずつ前進していく。
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