摂食障害と向き合い見つけた、「文章で人に寄り添いたい」という夢

私は、ある日を境にご飯が食べられなくなってしまいました。
それまで食べることが大好きで、友人たちと美味しいものを食べに出かけることが何より幸せでした。しかし、ある日を境にご飯が食べられなくなり、見た目も大きく変化してしまいました。
それは、今から2年前の冬。
私は、当時付き合っていた彼氏と1年を迎えようとしており、少しずつお互いの未来の話も出るようになりました。私も20代後半になり、いよいよ結婚をするのかもしれないと期待に胸を膨らませていました。
しかし、その思いはまさかの結末を迎えます。
それは、とても些細な喧嘩から始まりました。
お互い感情的になり、彼が突然「俺は、山にこもって自給自足の生活をしたいんだ!もう、10年以上も思い続けていたんだ」と言い始めました。そして、何度も繰り返される話の末に、「私か山かを選んで」と問いかけると、彼は一言「ごめん、俺はやっぱり山がいい」と覚悟を決めたような真剣な顔で言われ、私たちの関係は終わってしまいました。
その頃、仕事でも上手くいかないことが重なり、心の中に抱え込んだ悩みは膨らみつづけました。徐々に心身共に疲れ始めていきました。食事は喉を通らなくなり、夜も眠れない日々が続きました。
彼を忘れるために新しい恋を探すも、どれも上手くいきませんでした。
保育士という憧れの職業での充実していた生活から一変して、だんだん苦痛に感じることが増えていきました。
朝になり、目覚ましを何度かけても起きられなくなり、それと同時に体重は減少し、今まで人並みに食べられていたご飯は半分以下になり、食べてもすぐに出てしまうようになってしまいました。
過度のストレスと不安から睡眠も取れず、とうとう私は摂食障害になってしまいました。やりがいを感じ、純粋に楽しんでいた仕事への情熱と自信を失い続けました。
私生活だけでも誰かに必要とされたくて出会いを探しましたが、どれも上手くいかず、その度に不要な存在としての烙印を押され続けていきました。
保育士以外で別の道を探すことを決めてからは、夢という言葉をちらつかせ、マルチ商法に誘われネットビジネスに勧誘されかけたこともありました。自分の存在価値はますます分らなくなり、路頭に迷う放浪者のように人生を彷徨い続けました。
あれから、約2年。私はこの2年の間でかなり痩せてしまいました。
沢山の人に会い、自分の存在価値を確かめる方法を幾度となく探し求めました。仕事も保育士として自分のできる限りのことをやり続けましたが、人と関わることに恐怖さえ感じるようになっていきました。
仕事が上手くいかずこの先の人生を考えたとき、自分に何ができるのかを真剣に見つめ直し、迷いながらも夢を探し続けていたある日、人生を変える人物に出会ったのです。
その人は、見たものや感じたものを詩を通して自分の感情を素直に表現していました。
その作品を見たとき私は、衝撃を受け彼に思わず「私にもできますか?感じたことや体験したことを書いて誰かに届けることを」と聞いていました。
すると彼は、「あなたの感じたままを書くべきです。その声はいつか届く日がくるから」と答えました。
その日から、少しずつ過去を振り返り、今に目を向けながらこれまでの出来事や辛い体験を文章にして、自分の思いをありのままに伝えることをするようになりました。
数ヶ月経った頃、家族や友人に話してみることにしました。すると「きっとあなたなら大丈夫、とことんやりなよ!」と背中を押してくれたのです。
書き続けていく中で自分の作品が少しずつ見てもらえるようになった頃、彼は、読み終えた後に「これからも書き続けてほしい。君にはその才能があるから」と心から喜んでくれました。
新たな夢は、確実に大きな一歩を踏み出していました。
それでも摂食障害は完治したわけではなく、今でもご飯が食べられず、眠れない毎日を過ごしています。
時には、感情をむき出しにして泣き出すこともあれば、やり場のない怒りをぶつけてしまうこともあります。一人になりたい気持ちと孤独になるのが怖くなる感情に押し潰されそうになることも……。
この先も摂食障害と向き合い、悩む日々は続くでしょう。
社会人になり、まさか自分が大好きなご飯が食べられなくなる日が来るとは思ってもいませんでした。当たり前のように存在していた日常が壊れていくのを身をもって体験したからこそ、文章を通して、誰かの心に寄り添いたいと思うようになりました。
そして、ストレス社会に生きる人たちの中に、私のような経験をし、今もなお苦しみ続けている人や、克服した人もいるかもしれません。
私自身も沢山の人に支えられ助けてもらいながら、いつの日か笑い話になるように、そして同じ経験をした人たちに勇気を与えられるような言葉を文章として残していきたいと思います。
「悲しみや苦しみを味わった数だけ、人は優しくなれる」
この言葉は悩んでいた私に彼が言った言葉です。同じように悩み苦しむ人がいるのなら、そっと手を差し伸べて孤独の中から救い出す役割になりたいと思うのです。
同じ孤独の一人だったからこそ、誰よりも気持ちがわかるから。
私がそうだったように、何気ない言葉に救われ進むべき道を教えてもらいました。
今度は私が悩みをかかえ苦しんでいる人たちの道標になれるように、言葉を紡いでいきたいと思うのです。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
恋愛やキャリアなど個人的な経験と、Metooやジェンダーなどの社会的関心が混ざり合ったエッセイやコラム、インタビューを配信しています。