私のずっと捨てられないものは、ダッフィーのキーホルダーです。
ダッフィーとはディズニーシーで限定販売されているクマのぬいぐるみで、私はディズニーファンなので、パークにもよく行きます。
「いや、ディズニー好きならそりゃ捨てられないでしょ」って言われるのは当然かもしれません。しかし、たくさん持っているダッフィーのキーホルダーの中でも一番古くて、使い古されて汚れてしまったダッフィーを、私は絶対に捨てることができません。

母の誕生日にディズニーシーへ。ダッフィーへの密かな思い

あれは中学生くらいのときだったと思います。
小さい頃からディズニーが大好きだった私は、お母さんの誕生日を大好きな場所でお祝いしたくて、お母さんの誕生日にディズニーに行きたいと言いました。母は一人娘の私のわがままと愛情を受け取ってくれて、一緒にディズニーシーに行くことにしました。

それはちょうど新しく発売されたダッフィーがほしいな、という密かな気持ちもあり、ディズニーランドではなくシーを選びました。父は仕事の関係で来れなかったのですが、私が母の誕生日に何かをプレゼントしたいという気持ちを汲み取ってくれて、少し多めのお小遣いをくれました。

私は一日中、母と二人でディズニーシーを満喫し、アトラクションもフードもショーもたくさん体験しました。
私が大好きなアトラクションにも嬉しそうに着いてきてくれるし、食べたいものもすべて買ってくれました。一緒にキャラクターのカチューシャも着けてたくさん写真も撮りました。

しかし、私の中で一つだけ決めていたことがあります。それはお土産だけは自分のお小遣いで買うということでした。
私の家族は毎年家族旅行に行っていましたが、各地での自分や友達へのお土産はお小遣いの範囲内で買うというルールがありました。そこで私はお父さんからもらったお小遣いで、ダッフィーと母への誕生日プレゼントを買おうと考えていたのです。

お小遣いでは母へのプレゼントとダッフィーの両方は買えなかった

しかし、中学生の私には十分なお小遣いはありませんでした。しかもディズニーのお土産はすべて高く、私の所持金では何か一つを買うのが精一杯のお金しかありませんでした。
また、ダッフィーのキーホルダーは当時は一番高いキーホルダーで、それを買うと他のものが買えなくなってしまう値段でした。

そこで、私はずっと欲しかったダッフィーを諦めて、母への誕生日プレゼントをこっそり買いました。心残りで、すっごく欲しかった気持ちをぐっと堪え、母親にも「買わなくていいの?」と聞かれ、「大丈夫」と強がり帰りました。

楽しかったことに変わりはないので、残念な気持ちを抱えつつ家に帰り、父と一緒に母の誕生日を祝い、ディズニーで買ったプレゼントを渡しました。
母はすごく嬉しそうに喜んでくれて、やっぱり我慢して買った甲斐があったと感じました。

祖母からもらった袋の中にあった茶色いふわふわ。私は言葉を失った

母の誕生日の次の土日に、私と母は祖父母の家(母の母)に行きました。私は祖父母が大好きで、行くたびにたくさんお話をしました。
もちろんその日は母の誕生日の話もし、ディズニーシーへ行った話もしました。新しく出たダッフィーというキャラクターの話もし、また次に行ったときに買うんだ、ということを言いました。祖父母にはキャラクターの違いはわからないけど、私と母が楽しそうに話すのを嬉しそうに聞いてくれました。

祖父母の家で時間を過ごし、いざ帰ろうと思ったその時、祖母が「町内会で色々もらったから持っていって〜」と言って袋を渡してくれました。なんとその袋は、ディズニーリゾートのお土産の袋と同じでした。
しかし、よく町内会で余ったおもちゃやお菓子をその袋のままもらっていたので、今回はどんなお菓子かな〜と思い、期待もせずに袋の中をのぞきました。

すると、何やら茶色いふわふわしたものが入っていました。
まさか。恐る恐る開けてみると、なんとそこにはダッフィーのキーホルダーが入っていたのです。
「隣のおばさんの娘さんがディズニーのキャストさんでね、なんかお孫さんがディズニー好きって聞いたから家にあった余り物でもよければもらってって言われたんだよね〜」
祖母はそのキャラクターの名前など知らないし、そのキャラクターがどれだけプレミアかも知りません。
しかも私は、ずっと欲しかったダッフィーを買いたい気持ちを抑えてまで母の誕生日プレゼントを買った直後だったので、驚きと嬉しさで思わず言葉を失いました。そして無意識にぼろぼろ泣いてしまったのです。

母には「本当は欲しかったダッフィーを買わないで、わざわざプレゼントを選んでくれたのを知っていたんだ。だから余計に嬉しかったんだ。これはそんな優しい私へのご褒美だね」と言われました。

人に喜んでもらおうと何かをすると結果的に返ってくる、ということが、目で見てわかる出来事だったので、私はこのダッフィーを一生大事にします。