私は、数々の元彼たちにされた出来事を書くという作業をしている。
その名も「どうしてこんなにクズなのか」だ。
かつて出会った元彼たちは、ゴミ屋敷に住んでた人、都合よく使われ浮気をした人、山に篭りたいと別れを告げてきた人、自分が最も優秀な存在だと言い続けてきた人など、本当に様々だった。
その度に、恋愛を諦め、生涯独身を貫こうと決めていた。しかし、寂しがりやな私は、一時的な安心感を求めて、彼氏を作っては、別れての繰り返しだった。
そんな出会いの仕方をしていれば、心から愛してくれる人に出会えないのも当然なのかもしれない。しかし、当時の私はそのことには気づいていなかった。
あの日までは……。

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それは、去年の冬にまで遡る。当時付き合っていた彼と、本気で結婚を考えていた。趣味や考え方も似ていて、何より一緒にいるだけで幸せだった。
しかし、彼には夢があった。「山にこもって自給自足の生活がしたい」という夢が。
そのことで何度も喧嘩をし、別れ話にも発展していた。最後には、「やっぱり俺は、山に篭りたい。一人で生活をしていきたいんだ」と言われ、半ば諦める形で別れたのだ。

そこからの一年間は、目も当てられない程に荒んでいた。マッチングアプリを再び始めたものの、どれもうまく行かず、最終的にマルチ商法に誘われてしまうほど、運に見放されていた。
正直この頃には全てに諦めを感じていた。「どうせ、私なんて一生結婚は出来ないし、今までだって誰一人うまくいくことはなかったんだから」と、絶望にも似た感情さえ抱き始めていた。同時に仕事も上手くいかず、どんどん心も疲れていき、体調にまで支障をきたしていた。
運命の時は、突然訪れた。
アプリを始めて半年が経とうとしていた。もはや希望など捨てていた頃に彼と出会った。
「もう、どうでもいいや」と作業のように手当たり次第にいいねのボタンを押していた。
その一人が、彼だった。

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彼とアプリの中でやり取りを重ね、自然とLINEのやり取りや電話に変わっていった。何度も言葉を重ねていくうちに、自然と会いたいと思うようになっていた。
しかし、付き合うことはあまり考えていなかった。傷つくくらいなら、楽しいだけで終わる程度に関わろうと思っていた。しかし、彼は違った。
初めて会った日、彼はとても緊張していた。そして、ぎこちなく「初めまして……。よ、よろしくね」と笑った。その姿を見て、直感で「この人とずっといるんだな」と思ったのだ。今まで感じたこともない感情に、胸のざわつきは止まらなかった。徐々に距離は縮まり、自然と付き合うようになった。

彼は、不思議な人だった。そして、誰よりも愛情深く繊細な人でもあった。
付き合うようになり、知れば知るほど多少の喧嘩は起きてしまう。しかし、彼は、私の心の閉ざされた闇の部分にそっと入り込み、悲しみの深さや、孤独の大きさを知ろうとしてくれるのだ。
そして必ず、「大丈夫だよ、一人じゃないよ」と言ってくれる。そうやって、一つひとつ悲しい過去に触れてくれたのだ。彼と出会い、人生は大きく変わった。
彼自身にも夢があった。歌を通して多くの人に感動を与えられるようなシンガーになりたいというものだった。しかし、数々のオーディションを受けて、受かってもお金の話などに利用され、いつしか歌うことを諦めてしまった。
私は、彼の歌が大好きだった。繊細な歌声から彼の心の中を読み取れるような気がして。

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そして、数々の出会いと別れを経て、私たちは今年、夫婦となる。
私は物を書き、彼は歌を歌う。お互いに表現をする不思議な夫婦の第二の人生が始まろうとしている。
上手くいくことばかりではないが、いつか私の書いた作品が、彼の歌声と共に届けられたらという夢を新たに持ち、二人で生きていくことを決めたのだ。

かつて、裏切られた過去があるからこそ、彼との出会いを運命だと感じられるのかもしれない。
ある時、彼はこんなことを言っていた。
「本当に才能がある人は、やり続けられる人なんだ。だから、僕たちは夢があるかぎり、やり続けていこう。きっと報われる日が来るはずだから」と。
その言葉を胸に、私たち夫婦は表現することをこれからも続けていくのだ。
私たちの思いを届けるために。