私が世に出したい話、それが「どうしてこんなにクズなのか」だ。
かつて、付き合ってきた数々の元彼についてのエッセイを書いている。そして、今回は、「ゴミ屋敷に住んでいた男」について書いていこうと思う。

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彼もまた、クラブで出会った一人だ。いつものように友人とジンジャエールで乾杯をしながら、近況を報告していた。すると、背後から何やら陽気な声が聞こえてくる。
「お姉さんたち!僕たちと飲もうよ」
普段なら無視をするはずが、上機嫌だった私たちは、彼らを受け入れ、話をすることにした。しかし、内容のない話に少しずつ面倒な気持ちになり始めていた頃、一人の友人が席を立ち、ドリンクを取りに行った。
男二人と私という奇妙な三角関係が出来てしまった。気まずい雰囲気が流れ、早く友人に戻ってほしいと願い、連絡するも既読がつかず不安になっていた。
20分が過ぎた頃、ようやく席に戻ってきた友人に「ねえ!どこ行ってたの。心配したよ」と言うと、「ごめんごめん、お酒奢ってもらってた」と言った。
彼女が戻り、私たちは別の階に行くことを彼らに伝えた。すると、「連絡先だけ交換しよう」と言われ、渋々交換をしたのだ。

クラブから帰り、すぐさま連絡が入った。初めの方は適当に返していたのだが、徐々にやり取りが楽しくなり、数日後、私たちは会う約束をした。
会う前日、彼はこんなことを言っていた。
「俺、片付けが苦手で、車の中がすごく汚いけど許してね。頑張って掃除するけど」

私は、言うほど汚くはないだろうと思っていた。当日、茶色の車で登場した彼の車に乗り込もうとすると、足の踏み場もないくらい、物で溢れていた。
動揺を隠せず、乗るのをためらったのだが、彼は「大丈夫、ちょっと待ってて」と助手席の荷物を後ろに放り投げた。この時点でやめればよかったのだが、当時の私は恋愛経験が少なく、帰る選択も、この場で断る勇気もなかった。

しかし、彼にもいいところがあった。話が面白く一緒にいて楽しかった。だから、荒れた助手席のことは、忘れかけていた。
何度かデートを重ね、正式に付き合う事になった。しかし、これが私の運命を狂わせていくことになるとは……。

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付き合って三ヶ月が経ち、彼に一つ大きな不満を持っていた。それは、異常なまでに片付けができないこと。
彼の家に行ったときは、まず掃除をする。汚い部屋で一日を過ごすことは、私にとって地獄だった。だから、せめて過ごせるくらいの環境を自力で整えていた。
この日はいつにも増して汚い室内に文句を言いながら掃除をしていた。すると、ゴミ袋の下に沢山の白い胡麻が落ちていた。一袋をひっくり返したかのような量に疑問を抱き、ゴミ袋の中に目を向けると、黒いものが蠢いていた。恐る恐る近づくと、なんと、全て虫だった。そして、胡麻だと思っていた物は、虫の卵だったのだ。

あまりの出来事に悲鳴をあげ、家に入れなくなってしまった。なんとか、勇気を振り絞り虫を退治した私に、さらなる地獄が待っていた。彼が仕事から帰り、胡麻事件の話をすると、不機嫌そうに「そんなことばっかり、言うなよ」と怒り始めた。なんとも理不尽な態度に私も苛立っていたが、なるべく喧嘩をしないようにしていたため、冷静を保っていた。
すると、彼は麦茶を取り出し、私に注いでくれた。普通なら「ありがとう」と受け取るべきなのだが、胡麻事件の後だ。このお茶も信用ならないと飲むことを躊躇っていた。すると、さらに不機嫌になり「俺のお茶が飲めないの!?」と声を荒げたのだ。
仕方なく少しだけ口をつけた時、一瞬口の中がビリッと痺れる感覚に襲われた。
「ねえ!このお茶痺れるよ」と言うと、「そんなわけないだろ。ほら、飲めるじゃん」と言われ、もう一度口につけるとやはり痺れる感覚に襲われた。
恐怖のあまり、この日は水分を取ることを諦めた。

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それから数ヶ月後の一年記念日の日、私は彼から「好きな人ができた」と言われ振られてしまった。少し前から様子がおかしくなり、不安に思っていたことが的中したのだ。きっと彼の中では、掃除をしてくれる都合のいい女にしか思っていなかったのだろう。
そして、交際中に何度か同僚として聞いていた子と付き合い、数年後に結婚したらしい。それもまた、SNSのおすすめに現れ、知ってしまった。

かつて、悲しい思いをさせられた相手は、別の人と幸せな家庭を築いていた。悔しくて悲しくて惨めで、少しの間立ち直ることができなかった。だからこそ、今こうして文章を書き、過去を見つめ直すという作業をしている。

あの時の私に言えることがあるのだとしたら、伝えたい言葉がある。
「振られた悲しみは大きくても、その先の未来は決して悪くない。傷ついた数だけ、幸せは後からやってくるのだから」と。
そして私の元彼図鑑とも言える「どうしてこんなにクズなのか」シリーズは、まだまだ続いていくのであった。