「君はすごいよ。見た風景や感じたことを文章にできるんだから。ただの景色でしかないものに感情をのせて想いを伝えることは素晴らしいよ。誰にもできることじゃない。君にしか見えないものを書き続けて」
私が夢に向かって歩み始めた時、彼がふとした瞬間にかけてくれた言葉です。

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かつて私は言葉で伝えることが苦手でした。当たり障りのない言葉を選んで、求められた通りに発言することが正しいと思っていました。
だから、顔色をうかがってその時の空気を読みながら話すことを意識することが、いつしか当たり前になっていました。上辺だけの人間関係は出来上がり、本当の感情さえも忘れていきました。正しいと思う言葉には、偽りがあり、その場を平和にさせるための道具として使っていく。
本音で話し合うことを自ら避け続けていたのです。

だから、相手がストレートに感情を出してくると、心を閉ざし見て見ぬふりをしてきました。争い事も嫌いで、常に逃げてばかりいました。
それどころか、素直に生きる人たちをどこかで馬鹿にしていたのかもしれません。本当は、羨ましくて自分もそうありたいと思っていたのに、できないことへの苛立ちから、誰かを責める方法しか分からなかったのです。

失敗続きの人生に嫌気がさし、私は夢探しの旅に出かけました。何度も間違った方向に進んでは戻る、の繰り返しでした。
しかし、ある時出会った彼が夢への扉を開けてくれました。言葉で伝える素晴らしさを教えてくれました。素直になることへの大切さに気づかせてくれました。

きっと、誰かに言って欲しかったのかもしれません。
「あなたのやりたいことは、人を馬鹿にすることでも自分の生き方を嘆くことでもない。ただ、やりたいことに向かって純粋に楽しむことだよ」と。
そのことに気づくまでに随分と時間がかかってしまいました。

何度も挫折と失敗を繰り返し、悩み続けてきたからこそ、本当の意味を知ろうとし始めているのです。
時には、本来の姿を見失うこともありました。その度に彼は言うのです。
「大丈夫だよ。人はみんな未完成なんだ。だから、誰かと補いながら生きていくんだよ。それを人は“助け合う“っていうんだ。僕たちも未完成で不完全なんだ。だから、辛い時は手を取りあえばいい。悲しい時は一緒に泣けばいい。そうやって支えあって生きていこう」
そう言って、寄り添ってくれました。

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夢を見つけたあの日から、私の中で何かが変わり始めています。今まで足りなかったものを、一つひとつ丁寧に拾う作業をしているのかもしれません。

そして、私は思うのです。ただ生きていくだけなら一人でもできるかもしれない。しかし、意味を持って生きるには、一人では無理なのです。大切な誰かに支えられ、時に寄り添いながら一緒に人生を作り上げていくことが生きるということだと。

この先も、沢山の人に出会い、時には悲しい思いもするかもしれません。怒りに任せて、感情をむき出しにすることがあるかもしれません。その度に「ああ、今、私は生きてるな」と実感するでしょう。そして、また文章として言葉を紡ぐ作業をしていくのです。そうやって少しずつ私は、夢を叶えていきたいと思います。

私自身、孤独だった過去があるからこそ言えることなのかもしれません。言葉で伝えることが苦手だったからこそ、文章で言えなかったことを書き残そうとしているのかもしれません。
これからの人生は、思いのままを綴っていきたいと思います。感情に逆らわず、ありのままの私を。
そして、どんな時でも味方になってくれる存在を確かに感じながら、今日も私は、文字を紡いでいくのです。