私には、数少ない信頼できる友人がいます。
彼女たちと出会い、数々の名言を耳にする機会がありました。きっと、文章を書くようになって言葉の深さや重さを知るようになったのでしょう。

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私は、少し前まで一つ年下の友人とルームシェアをしていました。彼女との約一年半の共同生活に何度も心を救われてきました。
ある日、私は落ち込んでいました。今となっては理由も思い出せないほど些細なことでした。しかし、当時は目の前にあることさえ手につかず、周りが見えなくなっていました。
どうして自分の人生はこうも上手くいかないのか。他の人たちの幸せな姿を目の当たりにすればするほど、自分の生き方に疑問を抱くようになっていました。
そんな姿を一番近くで見ていたのが彼女だったのです。

ある日、彼女は私にこんなことを言いました。
「ねえ、人生には色々な形がある。私の人生もあなたの人生も全く違う歩き方をしているんだよ。だから、全ての人が主人公になれるんだよ。私もあなたも自分の物語の中で、唯一無二の存在だから」
そう言うと、照れ臭そうに部屋に戻って行きました。
彼女の言葉が、耳の奥で鳴り響き続けていました。
ふと、過去を振り返り、私自身が主人公として輝いたことがなかったことに気づきました。どれだけ辛い思いをしても、小さな幸せに目を向けても主人公になれたことは一度もありませんでした。
だからこそ、彼女の言葉が心の奥深くに刺さって離れませんでした。きっと、私のように主人公としてではなく、ただのエキストラとして生きてきたと感じる人がいるのではないでしょうか。

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そんな年下の友人は、とても不器用で愛情表現が苦手な人でした。
しかし、誰よりも思いやりの心を持ち、優しさにあふれている人でした。だから、小さな変化を見逃すことなく、常に勇気をくれるような言葉を投げかけてくれました。彼女と出会っていなければ、今こうして文章を書き続けていくことはできなかったでしょう。
初めて、夢を話したあの日、彼女は自分のことのように応援してくれました。そして「大丈夫!きっと想いは伝わるはずだから。主人公として沢山輝いてね」と言ってくれました。

そんな彼女との共同生活は、今年の六月に終わりを迎えました。
一緒に過ごしてきた日々は、本当に楽しく充実していました。くだらないことで笑い合った日もあれば、一日中話さないこともありました。それぞれの距離感を大切にしながら、お互いを尊重し続けてきました。大人になってから、こんなにも大切な存在ができるとは思っていませんでした。
文章を書くことで、少しでも誰かの心に寄り添いたいと思う気持ちが、少しずつ誰かの胸に響きはじめています。三十歳を目前に夢を持ち始めた私を笑うことも否定することもなく、心の底から応援してくれました。
時折、私の書いたエッセイを読み、「よかったね。おめでとう」と伝えてくれます。言葉は少ないけれど、沢山の愛情が詰まった表情を見て安心するのです。こんなに近くで、応援してくれる人に出会えて幸せだと。

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この先の人生のことは誰にもわかりません。
しかし、彼女との共同生活の中で「人生みんなが主人公」と言われた日から、私は考え方を変え、生きる本当の目的を見つけたような気がします。いつか、本物の物書きになった時、彼女の大好物のカニと共に過去の話をしながらお祝いをしたいと思っています。
そして、心から「ありがとう」と伝えたいのです。かつて、独りぼっちだった私に、沢山の幸せを教えてくれたことへの感謝を込めて。

言葉を紡いで一人でも多くの人の勇気になりたいと思うようになったのも、私自身が言葉に救われてきたからなのです。だから、これから先の未来を主人公として歩んでいきたいと思います。

そして、このエッセイを読んでくれた人に伝えたいと思います。
「あなた自身の人生を主人公として生きてください。辛いことや悲しいことは、物語の中でとても大事な出来事へと変わるでしょう。そして、そんな自分を愛してくれる周りの人たちを大切にしてください。人は独りぼっちでは生きていけないから。誰かと手を取り助け合うことが幸せに生きる近道だと思います。そして、誰よりも自分自身を愛してください」