元彼への復讐で書き始めたエッセイが繋いでくれた、三年越しの友

私には唯一、複数で遊ぶ友人たちがいました。大学で知り合った二人の友人と私の三人で、よく遊んでいました。
性格も見た目もバラバラな私たちは、他の人から見たら不自然に見えるほど、不釣り合いな関係だったと思います。しかし、一緒にいるだけでバカになれる時間が大好きでした。
昔は、広い公園でルームシェアをしたらどうなるか、即興でごっこ遊びが始まり、それぞれの役になりきったり、夜空を見上げて恋の話をしたり、いつかの結婚の話をして涙ぐむこともありました。
それだけ、特別な存在になっていたグループは、社会人になってからも交流を続けていましたが、私は一人の友人と喧嘩をしてしまいました。本当に些細で、今考えればどうでもよかったくらい、小さなことでした。それからは、三人で遊ぶこともなくなり、それぞれ自分達の道を歩き始めていきました。自然消滅という形で連絡することはなくなり、SNSを通じてどうなったかを知るくらいの仲になってしまいました。
そんなある日、三年ぶりくらいに一人の友人から連絡が来ました。私が、書いている文章をたまたま読んで感想をくれたのです。
少しずつ夢に向かって動き出していた私の文章を、一時間以上かけて全て読んでくれたと教えてくれました。ちょうど、彼女自身恋愛が上手くいかずに、どうしていいか分からなくなった時だったそうです。「エッセイ読んだよ!すごくよかった。言葉の一つひとつが心に入ってきて、スラスラ読んじゃった」と言ってくれました。
それがきっかけで、三年ぶりに私たちは電話をすることになったのです。
お互い連絡を取らなかった期間に起きた話を何時間もしました。二人の間にできたスキマを埋めるように、そして、仲の良かったあの頃に戻ったように、話し続けました。
彼女自身、結婚を約束した人と別れたり、仕事が上手くいかなかったり、辛い経験をしていることを知りました。そして、今付き合っている彼とも上手くいかないことが続き、不安を抱えていると教えてくれました。それなのに、電話を切る前に彼女は「結婚するんだよね!本当におめでとう」と言ってくれたのです。
本当は、誰よりも不安で苦しい時期なのに、私の幸せを心から喜んで祝ってくれた彼女の言葉を聞いて、受話器越しに涙を堪えるのに必死でした。私は、つまらない意地のせいで、距離をあけ、関わることを自然と避けていたのに、それなのに、彼女は昔と変わらず真っ直ぐな言葉で伝えてくれました。
あれから、私たちは連絡を取り合うようになり、空白の三年間を埋めるように昔の関係に戻りつつあります。そして、彼女から「結婚式にぜひ行かせてほしい、幸せな姿を見たい」と言ってくれたのです。
初めは正直迷いました。辛い状況の彼女を呼ぶことで、悲しい思いをさせてしまうのではないかと勝手に思い込んでいたから。
しかし、彼女の言葉に裏表はなく、心からお祝いをしたいという気持ちが溢れていました。だから、私は「ぜひきてほしい」とお願いをしました。
私が文章を書き始めたきっかけは、元彼への復讐でしたが、いつしか、私と同じ気持ちを持った人たちの勇気になれたらと思い、書くようになったのです。その一人が、大切な友人だったことに、私は嬉しさと誇りを持つことができました。目に見えない誰かではなく、目の前にいる大切な友人の心に、文章を通して寄り添うことができたから。そして、彼女と久しぶりの再会をしたことで、私自身も文章を書く意味を教えてもらった気がします。
これからも、私なりの思いを書きながら、不安や悲しみを背負い、進むべき道が分からなくなった人たちの、止まり木になりたいと思うのです。そして新たな友情物語を彼女ともう一度作って行きたいと思います。
空白の時間が、くだらない笑い話になるように。
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