伝えたいことがあるから諦めずに歩く道。保育士さんの笑顔のために

私の夢は、小さい頃から変わることはなかった。どれだけ成長しても、一度掲げた夢は、曲げずに持ち続けていた。保育士という夢を、私は、ずっと持ち続けていたんだ。
大好きだった先生に憧れて、いつか一緒に仕事をすると決めていたから。夢のためにできることは、なんでもしてきた。いつか、叶うと信じていたから。
社会人になって、私は保育士になることができた。何十年も思い続けてきた夢に、ようやく手が届いたことが、本当に嬉しかった。応援してくれた両親の顔が、今でも忘れられない。
「よくがんばったね、素敵な保育士さんになってね」
この言葉が、忘れられなかった。
だけど、理想と現実はまるで違った。
子どもたちの成長を見守るはずだったのに、大人の顔色をうかがい、仲間はずれにされないように、必死で働くことが全てだった。ましてや、子どもたちと関わる時間なんて、ほとんどなかったのだ。どれだけ頑張っても「気に入らない」その一言で、私は、仲間から追い出されてしまった。
夢だった仕事は、恐怖だけを植え付けるものへと変わってしまった。そして、一度目の挫折を私は味わってしまう。
「もう、無理だ。逃げ出そう」
そう心が叫んでしまったから、私は、一番初めの職場から、逃げるようにして辞めた。それからは、生きる希望を失い、大好きだった仕事への想いも捨てようとしていた。SNSで仕事の話を呟く友人たちを見ることが辛くて、自己否定をする毎日だった。
それでも、もう一度だけ、あと一回だけ、保育士になりたいと思った私は、新たな場所で保育士をすると決めた。そこからの七年間、本当に色々なことがあった。
初めは、トラウマが忘れられずに、ビクビクしながら働いていたが、数年も経てば、堂々と子どもたちと向き合えるようになった。
けれど、それも長くは続かなかった。少しずつ、周りの雰囲気は変わってしまい、子どもたちの話をすることが減っていった。その代わりに、愚痴や、噂話が当たり前になってしまった。楽しかった職場は、とても窮屈で苦しい場所へと変わってしまったのだ。私の夢は敗れ、仕事に行くことができなくなってしまった。
大好きな子どもたちの笑顔を、一番近くで見たかった。ただそれだけなのに、たったそれだけのことさえ、今はできないんだ。私の心も体もボロボロになってしまったけれど、一つだけ、救い出してくれるものがあった。
心の中に秘めていた思いを文章にして、表現することが、私の生きる希望となっていた。友人たちは、私の文章を読んでコメントをくれた。それぞれの言葉で、私を応援してくれた。
初めてだった。保育士以外に夢を持ったのは。
何度も葛藤したけれど、アラサーになって新たな夢を持つことにも迷いがなかったわけじゃない。それでも応援してくれる家族や友人がいた。保育士を目指していた頃と同じ気持ちが、私の中に芽生え始めていた。
どれだけ、辛い環境にいても私は、書くことをやめなかった。私には、新たにやりたいことができたんだ。いつか、保育士という仕事の中で経験したことや思いを伝えられるようにしたいという夢が。
私の友人たちの多くが、保育士をしていたが、職場の環境で諦めざる追えなくなってしまった。みんな口を揃えて「子どもは大好きだけど、環境が……」と話している。
いつか、私の文章が多くの人に読んでもらえるようになったら、この経験も話すつもりだ。少しでも、純粋に保育を楽しめる環境が増えていくように。子どもたちの笑顔を安心して守っていけるように。
たった一人の声だけでは、限界があるかもしれない。それでも、伝えたいことがあるから、長い道のりを諦めずに、夢に向かって歩いていきたいんだ。とても弱い立場に立たされてきた、思いを知ってもらうために。
あの時、勇気がなくて私は逃げるという選択をしてしまった。だから、今こそ勇気を出して、本当のことを伝えたい。そして、少しでも多くの子どもたちと保育士さんの笑顔に繋がる活動をしていきたいと思うのだ。
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