特集:あの恋から学んだこと

私の誕生日に恋人はバイトを入れた。自分を大切にする意味を知った

あの恋から学んだこと

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数年前、記念すべき二十歳の誕生日、私の恋人は当たり前のようにアルバイトを入れていた。正直、予想はしていた。彼女の誕生日でも関係なくバイトを入れるんだろうなと思わせる、そんな関係性だった。

予想はしていても悲しいという気持ちが芽生えないわけではない。恋人自身の大学の授業であったり、正社員としての仕事なら当時の私でも仕方ないと思えただろう。
しかし、シフトの変更をしやすい個別塾でのシフトを入れていたからこそ悲しかった。自分がバイト以下のように、無価値のように感じた。

◎          ◎

そんな私を心配した地元の友人たちは、誕生日前夜、いきなり私の家まで訪れた。
突然の訪問に喜びながら慌てる私を車に乗り込ませる。傍から見れば立派な誘拐だが、友人たちは私を元気づけようと連れ出してくれたのである。

まずはじめに、「中華料理をこってり食べたい」と言う私のリクエストにピッタリのレストランに連れていってくれた。その上、メインからデザートまでご馳走してくれた。
その後も車を走らせ、残業する人々の結晶である夜景を見つめる私に「お前のために輝いてるんだよ」などと言って笑わせてくれた。
誕生日が近づく中、誰もいない真っ暗な繁華街を走り抜け、0時になった瞬間ジャンプをするという、浮かれたことも皆でしてくれた。コンビニに行き、友達におすすめを聞きながら初めてのお酒を選んだりもした。

様々な友達からの誕生日おめでとうLINEが来る中で、いっこうに来ない恋人からのLINE。私が傷つく以上に友人が恋人のことを怒ってくれたから、どこか救われた気がした。仕方ないって思おうとしなくていいんだ、怒ってもいいんだ――。

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ああ、別れよう。自分を大切にしてくれる人はこんなにいるんだ。

ふと、そう思えた。
恋人のことを嫌いになったわけではなかった。嫌いになんてそう簡単になれなかった。だから今まで別れずに付き合い続けてきたのだろう。

でも、好きでいるあり方は、付き合うだけじゃないように思えた。お互いを大切にするために別の道でそれぞれ幸せになろう、そう決心できた誕生日であった。
20歳の私は、自分を大切にしてくれる人と一緒に過ごそうと決めたのだった。

そう決心してから別れるまで3か月ほどかかった。決心できたと思ったものの、いざ恋人を前にすると言えなかったのだ。
いざ別れたときも、なよなよした提案になってしまったが、なんとか切り出すことができたのは応援してくれた友人たちのおかげだ。

◎          ◎

当時、恋愛は我慢するものだと思い込んでいた。我慢してまで築く人間関係なんて無いなと、身をもって学んだ時間であった。あの時間があったから、自分を大切にできるようになったと思う。

自分を大切にするということは、「自分を大切にしてくれる人」をも大切にすることだ。私と、「私を大切にしてくれる人」のために、自分を大切にすることができるようになった。友情の有難さや自分を大切にすることの意味を気づかせてくれた恋人に、今の私は心から感謝している。
恋人も友人も、皆みんなありがとう。

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