対等じゃなかった遠距離恋愛。通っても心の距離は埋められなかった

今までの恋愛は、ほとんどが中距離か遠距離の人ばかりでした。近くて高速で一時間弱、遠くて高速で約五時間の人もいました。
なぜ、ここまで簡単に会いにいくことができない人ばかりと付き合うのか、正直私にも分かりませんが、私が住んでいる県には、ある特徴があります。それは、男性が清楚で可愛いアイドルのような人を好む傾向があることです。だから、目がクリッとして可愛らしい雰囲気の人は、私の住んでいる県では、かなりモテています。しかし、私の見た目は正反対で、同じ県の男性と付き合うことは至難の技だったのです。
稀に県内の人と付き合ったこともありますが、結局は別の地方から出てきた人ばかりでした。そんな私が交際をするには、県外か地方から来た県内の人に限られてしまうという、特殊な理由だったのです。
とはいえ、マッチングアプリをしていたときは、なるべく県内の人とマッチしようと努力はしていましたが、いいねを押してくれる人のほとんどが県外の人でした。
その中で出会った一人が奈良に住んでいた元彼でした。
彼と会うには、高速を使って約三時間の移動が必要になります。そして私は実家暮らし、彼は一人暮らし、必然的に彼の家に行くコースが決まり、私は毎週のように会いに行っていました。
初めこそ、交通費を出してくれていましたが、付き合いが長くなっていくと、私がほとんど出していたし、デートも家で映画を観たり、音楽を聴いたりすることがほとんどになっていきました。出費が多くても会いに行く理由は、会えない時に飽きられたり浮気をされたりすることが怖かったからです。
過去に二回浮気をされたことのある私は、もうあんな惨めな思いはしたくない一心で、給料の半分以上が交通費で消えてでも会いにいっていました。金額よりも会えた時の安心感には代えられなかったのです。
しかし、生活が厳しくなると、私の心の余裕は無くなっていき、彼と喧嘩をすることが増えていきました。「たまには、こっちに来てよ」と言っても、彼はのらりくらり返事をかわして、結局私が会いに行ってしまうパターン。
いつまで続くかなんて、正直私の我慢次第だなと思うことも増えていきました。そんな彼から突然言われた「山に籠る」宣言で、余計に喧嘩は増えていき、最終的には山を選んだ彼とはお別れをすることになってしまいました。
彼と交際していた期間に使ったお金があれば、もっと色んなことが出来たのにと後悔しても、時すでに遅しです。振り返ってみれば、ほとんどの場合、私が会いに行っていました。自分の中でも、彼は一人暮らしだからという都合のいいように理由をつけて、会いにいくことを正当化していました。
友人たちには、何度も止められていましたが、それでも会いにいくのは、結局のところ私が盲目モードだったからという理由もあるでしょう。会いに行くことで私は、彼らに対して愛を注いでいると勝手に思い込んでいたのかも知れません。
自分でやっていたことなのに、見返りを求めていた部分もあったから、会いに来てくれないこと以上にショックを受けたり、落ち込んだりもしました。それでも離れることも怖かったし、他に好きな人が出きてしまうことも怖かった。けれど、どの恋も上手くはいかず、結局浮気をされたり、飽きられたりすることもほとんどでした。
私の恋愛は、そもそも対等の関係ではなかったのです。だからこそ、来てもらうのが当たり前と思われていたのかも知れません。
今になって、当時の盲目モードの自分を叱ってやりたいと思うけれど、これも一つのネタになるから、ネタのための必要経費だったと、今なら思えるようになりました。私自身、不器用だったからこそ、会いに行くことが愛情を表現する一つだとも考えていたのかも知れません。
いつか、同じような境遇の人に会えることがあったら私は、強く言いたいです。
「通うことだけが愛じゃない。あなたの彼も同じくらい好きなら、きっとあなたに会いに来たいと思うはずだ」って。
結局は、愛されていなかったんです。
彼らにどれだけ尽くそうとも、会いに行こうとも、初めから本気だったのは、きっと私だけだったのでしょう。
距離の遠さは、私と彼らの心の遠さを表していたのかも知れない。
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