口を開けて笑えなかった私の復讐。歯茎を隠さない私の隣には彼がいる

私は、今年一年を振り返るため、なんとなくスマホの中にある写真を見ていました。友人や彼との写真を見ながら、元彼に言われたことをふと思い出したのです。
「お前って歯茎出てるよな。そうやって笑う女、嫌いなんだよね」
そう言われた過去がありました。だから昔の写真を遡ると、口を閉じて微笑んでいる写真か、無表情で睨んで見える顔をしているものが多いんです。
彼だけならここまで意識することはなかったと思います。しかし、何人にも「笑っているより、黙っていた方が可愛いよ」とか、「無表情でいる方が綺麗だよ」と言われることが多かった気がします。
いつしか私は、口を開けて笑うことを避けるようになってしまいました。今まで気にしたことがなかったからこそ、ショックも大きかったんだと思います。
「歯茎が出る笑い方は、そんなにいけないことなの?」
そう自問自答してしまうほど、自分の笑った顔に自信が持てなくなっていきました。友人に相談したこともあったけれど、「歯茎が出ているから変だよ」なんていう子は一人もおらず、「別に気にすることじゃないよ」と言ってくれました。
しかし、それが本心なのか心の中では変だと思っているのか、疑心暗鬼になってしまう部分もあり、いつしか口元を隠すことが癖付いてしまったのです。
好きな人に黙っている方が可愛いと言われれば、そうすることが正しいと考えてしまうほど、極端なところがありました。というよりも、常に自分を低く見すぎていたから、嫌われないように、捨てられないようにすることに必死だったんだと思います。相手に合わせてばかりの恋愛をしていたから、結局は飽きられて、浮気をされて、一番最低で惨めな終わりを迎えていました。
ただ、写真に写る今の私は、どの顔も歯茎がむき出しで、ニカッと笑った幸せそうな笑顔ばかりが、収められています。そして、その隣には、いつも彼がいました。「君の笑顔は、とても素敵だよ。僕まで幸せな気持ちになれるんだ」。
そう言ってくれながら、同じように笑うんです。
人生で私の笑顔を褒めてくれたのは、彼だけでした。
コンプレックスだった歯茎をチャームポイントだと教えてくれたのも彼でした。
今までの元彼たちは、私を理想の彼女にしたくて、都合のいい存在にしたいだけだったのです。そして私は、嫌われないように彼らが求める姿になって、自分を見失い、勝手に傷ついた哀れな女でした。
写真を見ながら、過去のことを振り返っていると、当時されたことが鮮明に思い出されて、腹が立ってしまうほど、悔しい気分になりました。
どうしたら、彼らに復讐ができるのか。
どうしたら、彼らが驚く私になれるのか。
それは、彼らが望まなかった笑顔の私でいることなんじゃないかなと思ったんです。過去の私には想像もできないくらい、今隣にいてくれる人と幸せを感じ、自然と笑顔が溢れる、そんな毎日を過ごすことだと思います。
コンプレックスを素敵だと言ってくれる人と、共に笑い合えることがどれだけ貴重なものかを私は知っています。残念ながら世の中には、気にしていることでも平気で傷つくことを言う人がいます。身近な人から言われることもあれば、全く知らない人に言われることだって時にはあります。
昔の私は、そんな言葉を鵜呑みにして、無駄な努力をし続けていました。
全員に好かれることなんて無理なのに、どうにかして全ての人に好かれようと必死だったのです。そんな私はいつも何かに怯えていたし、本当の姿なんてまるで見ようとしなかった。
ただ、スマホに写る顔が全てを物語っていました。別に誰かに合わせる必要なんてないんです。
コンプレックスは誰しもあると思います。時には、一番可愛いと思ってほしい相手に、否定されてしまうこともあるかもしれません。
そんな奴は、こっちから捨ててやればいいんです。
そして、コンプレックスをチャームポイントに変えて、そんな自分を好きだと言えるあなたでいて下さい。
どんな姿だろうと、あなたにしかない魅力が沢山ある。
だからこそ、一番の復讐方法は、自分のあらゆる姿を好きになり、堂々とすることなんだと私は思います。
見た目の美しさに囚われて否定するやつに幸せは来ません。
幸せになる資格もありません。
どうか、あなたのコンプレックスをチャームポイントとして受け入れて下さい。
その姿は、きっと心を豊かにするはずだから。
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