昔から、年に一度だけお母さんから手紙をもらえる日があります。
それがクリスマスでした。
もしも手紙をもらえるなら、普通は私が生まれた日だと思うのですが、何故か昔からクリスマスの日に「サンタさんより」と書いてある手紙をもらいます。

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私のお母さんは字に特徴があって、とても達筆で癖のある字を書きます。小さい頃は、サンタさんから手紙が来ることを楽しみにしていたし、本当にいると真剣に信じていました。
しかし、成長していくにつれて、その手紙はお母さんからのものだと気づくようになっていきました。それでも、子どもながらに知らないふりをして、「今年もサンタさんから手紙がきたよ」なんて私が喜んでいると、お母さんは「そっか、よかったね」といつも以上に優しい顔になりながら、答えてくれました。
ずいぶん昔に一度だけ、誕生日に手紙が欲しいとお願いをしたこともありましたが、「母ちゃんそういうのは書けないから」と断られてしまいました。きっと、母として手紙を書くことは恥ずかしくて、でもサンタの名前を借りれば想いを込めることが出来る、だから毎年クリスマスになるとサンタの名前を借りて、書いていたのかなと思います。

お母さんの不器用で恥ずかしがり屋なところをしっかりと受け継いだ私は、それ以降サンタさんという名のお母さんからの手紙を、年に一度の楽しみにしていました。サンタさんからの手紙と思えば、少し照れくさい内容でも、真っ直ぐな気持ちを受け取って、読むことができたんだと思います。

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そんな私は二十七歳で家を出るまで、クリスマスプレゼントをもらっていました。
二十歳の時にユーミンの曲に合わせて「父ちゃんがサンタクロース」と正体を明かされた後も、サンタさんに欲しいものを書き、お願いをしていました。
大人になってからもクリスマスプレゼントをもらう理由は、いつまでも子どものままでいたいという気持ちと、お母さんからの唯一の手紙が欲しい、その二つでした。
誕生日の時に断られたこともあり、余計に欲しかったのかもしれません。

小さい頃からもらい続けたサンタさんの手紙には、私の年齢に合わせたお母さんの心配事が綴られています。
子どもの時は「勉強を頑張っていますか?お友だちと仲良くしていますか?たまには、お母さんのお手伝いもしてあげてね」と書いてありました。
そして私が就職をしてから、仕事が忙しく悩むことが増えていた時のクリスマスの日は、サンタさんから「毎日遅くまでお仕事頑張っていますね。これからも大好きな先生と呼ばれるように無理をせず、頑張ってください」と書いてありました。
プレゼントを開けることもなく、その手紙を読みながら、いつまでも、いつまでも泣きました。そこには優しさがあって、温もりがあって、でもお母さんとしての心配の気持ちもある。そんな手紙でした。

けれど私は、起きてきたお母さんに手紙のことは触れず、「プレゼント、見たよ」とだけ伝えました。真っ赤になった目を見られたくなかったからです。その日、私は何度も手紙を読み返しながら、目に涙を浮かべて「母ちゃんありがとう」と泣きながら呟いていました。

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二十七歳になり、実家を出て最初のクリスマスには、手紙とプレゼントはありませんでした。
ようやく、大人になった実感を抱きながら、年に一度の手紙をもう、もらえないかと思うと、心にポッカリ穴が空いたような寂しさを覚えました。

今でも、お母さんサンタからもらった手紙は、大切にとってあります。年に一度だけ、お母さんの想いを知ることができる大切な手紙だからです。
この先、もう手紙をもらうことは無いかもしれません。不器用で恥ずかしがり屋だから、きっと本音を言葉で伝えてくることもないでしょう。
けれど今までもらった手紙は、紛れもなく愛情があって、優しさがあって、想いが込められていました。

今は離れて暮らしていますが、クリスマスの日には、お母さんサンタの手紙を読み返しながら、また泣こうと思います。
私にとって、それだけ価値のある手紙だから。