価値観も育ってきた国も違う。ママと私が家族への一歩を踏み出すまで

結婚式をするまで私たち夫婦は、沢山の壁を乗り越えなければなりませんでした。お金の問題、演出の問題、そして彼のママの問題。
彼のママは、結婚することを初めの方はあまりよく思っておらず、不安な言葉を口にしたり、少しだけ口調を強くして私たちに感情をぶつけてきたこともありました。結婚をすると決まってから、急遽フィリピンから日本へ帰国してもらい、顔合わせをしたせいで、考える時間も余裕もなかったのかもしれません。だからママは、心の準備も出来ずに可愛い一人息子を手放す覚悟も全く出来ないまま、話はどんどん進んでいったのだと思います。
そのせいでママと旦那は喧嘩をして、時には泣きながら電話がかかってくることもありました。その姿を見て何かできることはないかと、私なりに考えてママに会いに行ったり、結婚式の話もできる限り細かく話したりしました。
けれども一度広がった溝を修復することは中々難しく、お互いが探りながら話をする日々が続きました。
私はこのまま結婚式が上手く行くのかと不安の気持ちもありましたが、せっかくやるなら来てくれた人全員が笑顔になってほしいと、今まで以上に準備を頑張り、何度も何度もママに会う機会も作りました。その姿をママはどう感じたかは分かりませんが、やれることはやりきろうと決めてから、迷いはありませんでした。
結婚式当日はなんの問題もなく笑いあり、涙ありの式となりました。
後日、お礼も兼ねて彼の実家に行った時、今まではどこかよそよそしかったママが「よく来たね」と笑顔でハグをしてくれたのです。その瞬間、「あっ、認めてもらえたのかな」と直感で感じました。ママは「今日は日本料理にしたよ!美味しくなるように頑張ったから、いっぱい食べてね」と嬉しそうに話してくれました。
彼と私とママの三人でご飯を食べて、いつものように話をしました。
今まではどこかトゲがあるような口調が、この時は全く感じられず、終始和やかな雰囲気で食事をしました。食べ終わると「美味しいケーキ買ってきたよ!好きでしょ?食べるでしょ?」」と、いたずらっ子のような顔をして言いました。
私は受け入れてくれたことを確信し、「食べます!」と家ではないくらい大きな声で返事をしてしまいました。その言葉を聞いてママは嬉しそうにしていました。
結婚式前と後で明らかに違う態度に驚きもありましたが、何より受け入れてもらえたことに安堵しました。
結婚式を終えて、ママの中でもようやく決心がついたのか、新たな家族の一人として受け入れてくれたのか、正直言えばそれはまだ分かりません。けれども、ようやく一歩を踏み出せたような感じがしたのも事実なのです。
私にとっては、これからはママもパパも大切な家族になります。
出来ることなら仲良くなりたい。けれども上手くいかないこともあったり、どうしても難しい壁を乗り越えなければいけないことも出てくると思います。
人間だから価値観も考え方も違う。ましてやママと私は育ってきた国も違う。その中でお互いが歩み寄り関係を深めていくことは難しい問題なのかもしれない。
けれども、結婚式をしたことでほんの少しでも希望が見えてきたのなら、もう一度歩み寄ってみようと思います。
私も含めて本当の家族になれる、その日まで。
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