手に持っている数字と睨み合いながら、私はひたすら番号を呼ばれることを待っている。
モニターに映し出されている数字、そして機械が番号を呼ぶ声に耳を澄ませながら、今か今かと待っている。ここに来ている人たちは、それぞれに事情を抱えた人ばかりだ。
そう、私はハローワークで失業手当の申請の申し込みに来ていた。

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職員と私たちではかなりの格差があるような、そんな気がしてならない。マスクの下からでも伝わる無表情な顔、そして淡々と説明をしていく姿。
私は他の番号が呼ばれるたびにビクッと体が反応してしまう。別に怒られるわけではないけれど、何か責められるわけでもないけれど、とても心地悪い気がしていた。
失業者に対して少しばかりの気遣いなのか、穏やかなヒーリングソングみたいなのがずっと流れている。私みたいに心を壊した人、転職を考えている人、あるいは、第二の人生で仕事を探しに来ている人。中には小さな赤ちゃんを抱き抱えながら、求人募集のパソコンと睨み合う人もいた。
赤ちゃんは居心地が悪そうに、ぐずったり、体を反らして抵抗しているようにも見える。お母さんは困った様子であやしながら、仕事を探していた。ここに来ている人たちは一体どんな思いで、仕事を探しているのだろう。辞めた背景には、どんなことがあったのかも気になってしまう。
そんなことを考えながら、私はひたすら自分の番号を待っていた。少し硬めの椅子に腰掛けながら、ソワソワする心を落ち着かせるために、携帯を見たり人間観察をしたり。

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失業者という言葉が重くのしかかる気もしたけれど、紛れもなく私は失業者だから、仕方がない。どんな理由があったって、ハローワークの職員には、正直関係ないことなのだから。
とうとう番号が呼ばれると、一人の女性が同じ番号の紙をヒラヒラさせながら、私という番号を探している。
調節がまるであっていない椅子に腰掛けて、淡々と説明されることを必死に忘れないようにメモを取る。なんだか情けなくて悲しくて、ついつい肩に力が入って縮こまってしまう。
「別に悪いことなんてしてないけれど、本当は仕事も続けたかったし、辞めたくもなかったけれど、そうするしかなかったんだ」って勝手に心の中で言い訳をしながら、聞き続けた。
結婚式のためにやった可愛らしいネイルを見て、なんだか申し訳ない気持ちになる。メイクをしていることも合わせて申し訳ない。どんどん卑屈に考えてしまう自分に一番、申し訳なかった。
何度も言うけれど、私は辞めたかった訳じゃない……。辞めるしか、自分を守ることができなかった。淡々と説明を受け、謎の説明ムービーを観ながら余計なことを考えてしまう。

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ふと昨日の夜に夫と話した会話を思い出していた。
「世の中には無数の生き方がある。けれど、今の君は仕事か趣味かの二つの世界で生きている気がする。焦らなくていいんだよ。自分を見つめ直して、無数の生き方の中から一番向いているやり方を見つける。自分がやりたいと思える仕事だってきっといつか見つかるから。焦らないでゆっくり探していこうよ」と。
失業者の私が、自分のために時間を使っていいのだろうかと、極端に深く考えすぎていたのかもしれない。けれど、見えない未来の不安があることも拭うことはできない。私の生き方はどうなっていくのか。どういうふうに未来を歩んでいくのか。
それはこれから、答えを見つけていこうと思う。
人生のネタ集めだと思って。