もし、まとまったお金があれば。フィリピンにいる夫の祖母に会いたい

もしも今手元にまとまったお金があれば、私たちの生活は豊かになる。いまだに行けていない新婚旅行にすぐにでも行くだろう。国内旅行もいいけど、国外旅行もいい。円安なんて気にせずに、思いっきりバカンスでも楽しんでみたい。そんな風に妄想は膨らんでいく。
ただ、もしも本当にまとまったお金があれば、私は迷わずフィリピンへ行くと思う。何故なら、夫は日本とフィリピンのハーフであり、そして、ずっと会えていない大好きな夫の祖母がフィリピンにいるからだ。
夫は祖母のことをLolaと呼んでいる。だから私も自然とLolaと呼ぶようになった。フィリピンでは祖母のことをそう呼ぶらしい。
Lolaは今年83歳で、生活のほとんどを寝た状態で過ごしている。夫のアルバムを見させてもらった時、夫とLolaが頬をくっつける写真や、手を繋いでいる写真が沢山あった。二人の関係性が一目で見て分かるようなものばかりで、とても幸せそうだった。ママもその写真を見せながら、「二人は恋人のように仲がよかったのよ」と教えてくれた。
義実家に遊びに行くと、必ずテレビ電話をしてLolaの顔を見ながら話をする。ほとんどはフィリピンでLolaの世話をしているママの親友が話をしているけれど、それでも顔を見ながら話している夫は、嬉しそうにタガログ語で会話をしていた。
二人の関係性は、遠く離れていても十分伝わるくらい仲良しなのだ。けれどコロナが流行ってからは、中々会うことができていなかったらしい。
その話を聞きながら、去年の夏に亡くなった私の祖父を思い出していた。
私の祖父とLolaは同じ年齢だ。ずっと寝たきりではっきりと話せなくなっている姿を見ると、早いうちに会いたいと思うのは、当然だった。
ただ、簡単に会いに行けない距離と、それなりにかかる費用は今の私たちには、かなり痛い出費となってのしかかってしまう。
出来ることならすぐにでも会わせてあげたい。後悔しないうちに連れて行ってあげたい。
私がそうだったから。石川県に住んでいる祖父は、コロナのせいで全然会うことが出来なかった。気がつけば二年も月日は流れてしまい、そして、突然この世を去ってしまった。
どれだけ後悔しても、もう遅すぎたのだ。そんな思いを夫にはしてほしくない。あの時味わった気持ちがどれほど辛くて苦しいかを、私は知っているからこそ。
近くに住んでいれば、こんなに悩むこともないのに。もしも私たちにまとまったお金があれば、すぐにでも会いに行けるのに。
ふとした時に「Lolaに会いたいな。元気なうちに話したい」と呟くことがある。その姿を見るたびに、胸がキュッとしてしまうんだ。
人の命には必ず期限があって、永遠ではない。「あの時こうしておけばよかった」と思った時では、遅いのだ。けれども、今の現状自体も何か解決方法があるかと言われれば、中々難しいところなのだ。
心の底であと少し、待ってほしいと願うことしかできないけれど、いつか二人が再会して最高の笑顔になった瞬間を、写真に収めたいと思う。思い出は、どれだけ時間が過ぎたとしても、たとえ会えなくなったとしても唯一色褪せないものだから。
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