2022年の漢字は「病」という私が、「愛」だという夫と結婚した

2022年を振り返る今、頭の中では思い出が、走馬灯のように駆け巡っていた。人生をまだ28年しかやっていない私でも、考えることがあった。
一年を振り返るというよりも人生を振り返っている、そんな感覚かもしれない。けれども、今まで生きてきた中で大袈裟ではなく、間違いなく2022年一年が一番大きな変化であり、人生の転機だった。
つい最近、夫と「今年の漢字を一文字で表すと?」なんてありきたりな会話をしたばかりだ。
考えた末に出した答えは『病』だった。約3年間悩み続けた体調不良は、心の病だったから。病気になったからこそ、見えてくる景色があって、支えられていることを実感することができた。
心が乱れ体調が不安定だった時に、付き合っていた彼と結婚を急いだわけではないけれど、献身的なサポートのおかげで生涯を共にする決意をした。結婚と同時期に命よりも大切で大好きだった保育士という仕事を、私は心の病で辞めた。
どれだけ辛くても、今までは一人だった。だから、体がおかしくなっても、辛くて泣いてしまう時でもなんとか踏ん張ってやり続けてきた。
その緊張の糸も、2022年の6月に切れてしまった。向き合うことを恐れて、現実を見たくなくてずっと我慢してきた。「私ならまだやれる。他の人だって大変なんだから、私ばかり弱音を吐いてはいけない」そう言い続けるしかなかった。
もしも、夫が今までの元彼たちと同じような性格で、私に関心がなければ、病気と知らずに今まで通り仕事を続けていただろう。
仕事を辞めるまで、何度も、何度も、喧嘩をした。時には暴言を吐いたり、傷つけたりする言葉だって何回も吐き捨てた。時には「何も分からないくせに!簡単に言わないでよ」と昭和のトレンディドラマみたいなセリフまで飛び出す始末。その度に悲しそうな顔をして私を見つめ、「大丈夫、大丈夫」と慰めてくれた。こんな奴、さっさと別れてしまえばいいのにと、何度思ったことか。
そんな夫の漢字は『愛』らしい。
出会った時、変なマスクをつけて登場した夫は、とにかく優しくて紳士だった。これほどまでに優しい人間がいるのかと疑ってしまうほど。
付き合っている間、私は常に疑いの眼差しで見ていた気がする。「この人も、昔の男みたいに去っていくんだ。本当の愛なんてどこにもないんだ」そう思うしかなかった。それは、本能的に傷つかないための私なりの防御策だった。
けれども、夫は一度たりとも優しさを失ったことはなく、常に思いやりと尊敬の心で接してくれたのだ。口を開けば「こんなに人を愛したことはなかった。ずっといつかは終わるものだと思っていたから。付き合っても浮気されて生きてきたから、信じられなかったんだ。でもね、君だけは違う。なぜかは分からないけれど、だから君は僕の初恋なんだ」と。結婚してからもその言葉は変わらず、ずっと初恋の相手として好きでいてくれている。
2022年は、色々な意味で変化をもたらしてくれた。
人間のいい加減さに気づく瞬間があった。自分可愛さに傷つけるような言葉を言ってきた人もいた。その反対に数年ぶりに再会した友人と、関係を深めることができたり、仕事を辞めて、好きなことで生きるチャンスをもらったり。何より、新しい家族として夫と人生を歩む決断もした。
生きていると想像もしていなかったことが起こる。良いことも悪いことも含めて味わい、感情の赴くままに色々な形で表現してきた。
人生は一度きりしかない。そして、私の生き方は私にしか決められない。それを教えてもらった一年だった。
2023年の私もきっと迷ったり悩んだり、時には傷つくこともあるだろう。その度に、家族が、友人が、もしくは名前も知らない誰かが、手を差し伸べてくれるかもしれない。
人間は一人ぼっちでは生きられないから。それを十分に知ったからこそ、新たな一年を沢山の感情に翻弄されながら過ごしていきたいと思うのだ。新たな自分に会えることを、密かに楽しみに思うんだ。2022年を振り返る作業をもう少しだけ、やりながら。
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