特集:寒かった「あの日」に

片膝をつき、微笑む王子様。安楽死もよぎった私がプリンセスになった日

寒かった「あの日」に

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あの日も、今日みたいに風が冷たく芯まで冷えるほどでした。たった1日だけ、私をプリンセスにしてくれたあの日と同じように。

シンデレラ城の少し中に入ったベンチで私は座り、涙を流している。その目の前には、片膝をついて小さな紫色の箱を開き、微笑む王子様がいました。
そう、私はプロポーズをされているのです。小さい頃から夢だったディズニーランドで。
付き合いたての頃、私は「プロポーズをされるなら、思い出が沢山詰まったディズニーでしてほしい」と何気ない会話の中で話していました。

彼はその言葉を覚えてくれていました。恥ずかしがり屋な私は、人前で見られるのが嫌で結果、シンデレラ城の前ではなく、少し入ったベンチでしてもらったのです。
彼は、少し照れながら「僕と、結婚してください」と言いました。私は泣きすぎていて返事を忘れていると、「結婚してくれる?」と不安そうに顔を覗き込まれて、もう一度言われました。

◎          ◎

彼と出会う半年前まで、私は人生を半ば諦めていました。マッチングアプリをやっていても、運命の人に出会う事もなく、むしろ道具のように扱われてしまうことさえありました。
この時からでしょうか。人生に期限を決めて、60歳になったら「安楽死を選ぼう」そんな極端な考えまでしていたのは。

出会った人の中には、私の見た目と性格のギャップに「なんか違う。思っていた君は、そんな人じゃなかった」と言って、去っていきました。他にも、恋愛感情を道具に使ってマルチ商法へと勧誘してきました。何度も甘く囁かれた言葉は、私の心をズタズタにしました。
「好きだよ、かわいいね。今日もとってもお洒落だよ」なんて耳障りのいいことを並べていたのは、恋人にしたいのではなく、カモとしてみていたからなのです。
他にも「僕には好きな人がいる。けれど、彼女には好きな人がいるから、惰性で恋人を探している。そうすれば、向こうがいつか振り向いてくれるかもしれないから」と、付き合う寸前で言われました。そのタイミングでSNSには、元彼たちが結婚した幸せな投稿をしていて、ただ一人私だけが、孤独の渦に飲み込まれていました。当時一緒に住んでいた友人さえも時には涙を流しながら「どうして、上手くいかないんだろうね」というほど。

◎          ◎

だから、諦めていたんです。私みたいな人は、幸せとはほど遠い存在なんだと。このまま一人、孤独死を考えていかなければならないんだと。
そこに現れた人こそ、今の夫である彼だったのです。
初めて私という人間を正面から見てくれました。過去の悲しみも一緒に受け止めてくれました。結婚を諦めていた私に、初めて幸せを与えてくれたのです。
プロポーズをされた時、友人たちは泣いて喜んでくれました。「本当によかったね、幸せになってね」そう言ってくれたのです。
そして、ちょうどプロポーズをされた日に、私が書いたエッセイが掲載された日でもありました。プロポーズをされた日に、私の夢も一歩前に進んだのです。

◎          ◎

もしも、彼と出会わずにいたら今も人生の迷子になり続けていたでしょう。そして夢も見つけることなく、仕事も辞められず、もっとひどい状況になっていたかもしれません。
今までの人生では、いつも大事な選択を間違えてばかりいました。目先のことしか考えずにいるから、結局自ら傷つく道を選んでいたんです。
ただ、傷つき続けたからこそ、彼の優しさが痛いほどわかる気がします。不幸だったからこそ、友人たちの温かさが身に染みてくるような気がします。過去に安楽死を考えていた人間からは、到底想像もできない幸せを感じると同時に、人生は捨てたもんじゃないなと思うのです。

王子様はおとぎ話の世界だけで、現実にはいないと思っていました。白馬ではないけれど、アプリが運んでくれた私だけの王子様と色々道に迷いながら、人生の物語を一緒に完成させていきたいと思います。
シンデレラみたいな美人ではないし、何か特別惹かれるものを持ち合わせてはいないけれど、私にしかない何かを見てくれる人と、手を取り合いながら、生きていこうと。

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