「変わり者」の私を好きになれたのは、いつまでも自由な叔父のおかげ

家族の中でも、親族の中でも、そして友人の中でも、私は「変わり者」でした。自分では自覚はないけれど、よく「変わっている」と言われることが多かったからです。
結婚する前なんかは、いとこの中で結婚できるランキングで最下位という不名誉な称号まで与えられていたほど、生活感のないスタイルは、少しだけ異様に見えていたのかもしれません。
ただ、私自身はそんなつもりはなくて、むしろつまらない人間のように思っていました。だから、結婚をした時に全員が口を揃えて「この子を拾ってくれてありがとう」と言うくらいでした。
昔から自分の性格が誰に似ているのかを考えたこともあったけれど、弟と正反対な私は、家族の中で似ている人も、親戚の中で似ている人も見つからず、「この性格の本当のルーツは誰なんだろう」と考えることもありました。しかし、やっぱり分からなくてそのまま大人になってしまったんです。
そんなある日、私は初めて自分の性格のルーツなるものを知ることになります。
結婚したばかりだったので、夫を連れて親戚に会いにいく機会が何度もありました。
ついこの間も、母の実家に夫を連れて会いに行くことになり、本当なら、母たちも一緒に行く予定でしたが、弟がコロナになってしまったことで、私と夫の二人で行くことになりました。
祖父の家に着くと、母の弟のゆっくんと祖父が出迎えてくれました。夫は「結婚式に来てくださり、ありがとうございます」と挨拶をし、その足で祖母のお墓参りに行くことになりました。祖父もゆっくんも性格が穏やかで、夫のことを気遣いながら話をしてくれました。
お墓に手を合わせた後、みんなでご飯の準備を一緒に行いました。少し高めのお肉と机に何本も並べられたビール。「さあ、宴を始めよう!」というくらいの勢いで乾杯をしました。
肉を焼きながら、ゆっくんは「結婚式、最高だったよ。本当に泣いたもんね。いやぁ、よかったよ」と何度も何度も褒めてくれました。私たちもその言葉を聞いて、夫なんかは、ビールを飲みながら嬉しそうに何度も「ありがとうございます」と言っていました。
時間が経つにつれてお酒も進み、祖父の家にあったアルバムを見ることになりました。幼少期の私の顔を見て、夫は「おばあちゃんにそっくりだったんだね」と言いました。
祖母は、私が中学生の時に亡くなりました。優しくて、派手好きで、何よりお洒落だった祖母は、私の憧れでもあり、一番の理解者でもありました。似ているねと言われることが、嬉しくて「私の中で今でもばあちゃんは生き続けているんだな」と純粋に嬉しかった。
さらにお酒が進んでいき、「時効だから言うんだけどさぁ」から始まり、ひょんなことからゆっくんの過去の話になりました。
私も今まで知らなかったのですが、昔ゆっくんは、素行が悪く不良街道まっしぐらだったそうです。あまりにも悪さがすぎて、私の母に泣いて怒られたこともあったそうです。
そんなゆっくんが、不良の道をスパッと辞められた理由は、私が生まれたことだったそうです。自分の姪っ子を初めて見た時、「俺、やめようって思って、すっぱり辞めたんだよね」と言いました。続けて「もしも、あの時辞めていなかったら、今頃完全に道を外れていたかもしれないしね」と笑って話していました。
昔から、ゆっくんは優しいお兄ちゃんでした。そしてゆっくん自身も変わり者であり、自分の人生を謳歌しています。誰かに縛られることなく、自由に生きて、好きなことを楽しむ。
誰になんと言われようと貫く姿に、少しだけ私の性格と似ていると感じたのです。そして、今でも叔父さんというよりも、お兄ちゃんみたいなゆっくんが大好きです。
私の変わり者の性格は、ゆっくんに似ているのかと思うと、なんだか嬉しい気持ちにすらなる。気がつけば、夫もゆっくんのことが大好きになっていました。
私も夫も変わり者と言われるけれど、さらに変わり者のゆっくんだからこそ、気が合うのかもしれません。そしてゆっくん自身も、亡くなった祖母の面影を感じる私を、大切にしてくれているんだと思います。
帰りの車内で「私は、やっぱり私のままでいいんだ」と夫に言うと、「君は君のままでいいんだよ。ゆっくんみたいに自由に好きなことを楽しむ。そうやって生きていけば、道は開けていくよ」と言いました。
昔は「変わり者」という言葉が、大っ嫌いでした。腫れ物に触るかのような、少し距離を感じる言い方が嫌だったんです。「お前は、人と違って変だ」そんな風に思われていることが。
ただ今は、そんな自分もちょっとだけ好きになろうと思います。
ゆっくんみたいな、幾つになっても自由に生きていける、そんな大人の仲間入りをしたことが嬉しいから。
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