最近、私が書いたエッセイに感想をいただくことが増えています。特に辛かった過去の話には、それぞれの想いをのせて体験談を交えながら話してくれる人もいます。
会った事はないけれど、どこか同じ匂いを感じ、どこか人ごとではないようにも思えるのです。私は常に「一人でもいいから力になりたい。私の文章で勇気に変える事が出来たらいいな」そんなことを考えながら、パソコンに向かい続けてきました。

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初めの頃は読んでもらえる人も少なくて、いつも家族と友人が私の読者でした。どれだけ下向きな言葉を言おうと「大丈夫!続ければきっと面白いことになるよ」と背中を押してくれました。
それでもやっぱり、自信がなかったんです。私なんかの言葉で何か力になるのだろうか。こんな後ろ向きな話なんて誰が読みたいのだろうか。その時の精神状況も、私をマイナスに突き落とす一つの理由でした。
それでも周りは言いました。
「書き続けて!あなたにしかできない言葉があるはずだから」と。
信じたい気持ちと信じきれない気持ちの二つで、何度も何度も悩みました。「私なんかに才能なんてない。ただの趣味でしかないんだ」という言葉が、口癖になってしまったのです。

その頃からでしょうか。少しずつポツリポツリとコメントがもらえるようになったのは。私の文章を読んで、正面から言葉を返してくれる人たちが増えていったのは。
コメントを見つけるたびに、私の心に小さな灯りが灯るような気がしました。
同じように悩んでいる人がいて、共感してくれて、時には励まされて。「世界はこんなに温かい人たちであふれているんだ」と感じるようになっていきました。
私が勇気を与えたいと思っていたのに、いつしか勇気を与えられる側になっていたのです。どれだけ遅くなったとしても、書いてくれた一人ひとりに感想を返しています。「ありがとう」という感謝の気持ちを込めて。

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エッセイを書き始めて一年が経ちました。
私の人生は良いことも悪いことも含めて、本当に大きく変わりました。
もしも仕事を辞めていなかったら、ここまで続ける事はできなかったでしょう。
趣味の範囲で終わっていたのかもしれません。
保育士を続けていたら、見えている景色は間違いなく変わっていた。
けれども、辞めてからの景色もまた大きく変わってしまった。
辛くなかった、苦しくなかったと言えば嘘になる。
そして、今までの人生の中で私は、多くの人を失いました。
仕事をしていた時は、何より嫌われることが怖かった。
だから常に自分を偽って、笑顔で過ごすことを心がけていました。
薄っぺらい紙切れのような交友は、あっという間に破れてしまったのです。
心の病と共に。

そのおかげで色々なことを知り、そして学びました。
私の夢はたった一人の力では叶うことはできません。背景には支えてくれる家族がいて、友人がいる。そして何より、私という人間が書いた文章を読んでくれる読者がいる。どれだけ素晴らしいものを書いたとしても、読んでもらえなければ意味がないのです。
そして読んでもらえなかった辛さも、沢山味わってきました。一年の間、楽なことなんて一度もなかった。きっと、それも伝わっているのかもしれません。

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ただ一つ、私が勇気を与える側ではなく、与えられる側だと気付いたのは最近です。
この先も、私はやっぱり一人では何もできないのです。色々な人たちに助けられて、支えられて、時には言葉に救われて。そんな弱虫な物書きですが、沢山の感謝を伝えるためにも書き続けていこうと思います。
いつか、画面越しで言葉のやり取りしていた人たちと会える日がくることを信じて。そして何より、陰で支え続けてくれた大切な家族、友人たちに胸を張ってやり続けた成果を見せたい。
その時、私の言葉で感謝を伝えようと思います。
「勇気をくれてありがとう。そして信じ続けてくれてありがとう」と。