友人の忠告も聞かず、ダメンズの「理想の女性」になろうと努めた私

私が過去に付き合ってきた人たちは、どれも「ダメンズ」と呼ばれる人ばかりでした。お金にだらしがなかったり、欲望のまま突き進んだり、時には自分の理想を押し付けてくる人もいました。
彼らと付き合っている時、私はまるでマネキンのように、各々の趣味に合わせた身なりをして、理想の女性になるようにと努めました。周りがどれだけ「そんな人やめなよ」と言ってきても、「大丈夫、あの人には、私にしか分からない魅力があるから」と何度も何度も忠告を無視して、彼らの胸に飛び込んでいきました。時間を使って、お金を使って、時には心を捧げて。いつしか私が誰なのかも分からなくなるほど、自分というものがなくなっていったのです。それでも「好き」という気持ちを抑えることは出来ませんでした。
もしも、昔からそれなりに人間関係を築ける子ども時代を過ごしていたら、こんな風にはなっていなかったと思います。そして、普通に恋愛が何なのかも知っていたら、愛されることがどんなことかを分かっていたら、きっと友人たちの言葉に耳を傾けていたでしょう。
初めて必要とされたことが嬉しかった。可愛いと容姿を褒めてくれたことが、嬉しかった。今まで言って欲しかった言葉を、彼らは最も簡単に語りかけてくれたのです。
付き合うたびに「今度こそ大丈夫。きっと、幸せな未来が待っている」と思い続けてきました。彼氏が変わるたびに、友人たちにも会わせました。その度に「本当に今度は大丈夫なの?」と聞かれていました。
その言葉を言われた時、私は決まって彼の良いところばかりを話すんです。「こんなところが素敵だよ」とか「こんなことをしてくれたよ」と。
今思えば、当たり前なことばかりを言っていました。それに早くから気づいていた友人たちは「あんまり信じすぎちゃダメだよ」と忠告をするのです。
ただ私自身が盲目になっていたから、誰の言葉も届くことはありませんでした。数年来の友人の言葉より、出会って数ヶ月の男の言葉を信じていたのです。
いや、必死で信じようとする場所を探していたんだと思います。
独りになるのが怖くて、結婚もできずに孤独死していく未来が見え隠れしているようで。けれど、結局は友人たちの忠告通りになってしまうんです。あれだけ「やめておけ」と口を酸っぱく言われていた通りになるんです。そして、何度も何度も同じことを繰り返して、私は人よりも多く自ら傷つきにいっていました。
愛される本当の意味を知らなかったんです。ただ感情的に好きという気持ちを優先させて、表面上の言葉を信じてどんどん奈落の底へと落ちていきました。
当然ですよね。
誰の言葉も聞かずに、上辺だけの幸せに縋っていたんですから。
私が当時付き合っていた彼たちに抱いていた感情は、紛れもなく「好き」という想いからきていました。ただ、年齢が上がるにつれて、周りが結婚をする姿を見るたびに、独りぼっちになりたくなくて、結婚を浅く考えてしまう時期もありました。私たちカップルは何も見えていなかったのに、口約束の「いつか結婚したいね」なんて言葉を私は健気に待っていた時期もありました。
結局、口だけの約束を果たされたことは一度もありませんでした。そして、具体的な未来の話をされたこともありませんでした。恋愛したばかりの子どもが「いつか結婚しようね」と話しているのと同じようなことを、大人になって話していました。
もっと具体的にしっかり話せるような年齢になっていたのにも関わらず、子どもみたいなことを言っていたんです。それも、もしかしたら現実を見ないようにお互いが無意識にしていた行動なのかもしれません。あの時の私たちは、一時的な感情の高鳴りだけで動いていました。
ただ一つ言えるとすれば、恋愛をしている間はとても楽しかったです。たとえ、ありのままの自分を出せなかったとしても、一時的な感情で色々な冒険をすることができました。今までの私がしてこなかった大胆な行動をすることだってありました。
それも、今となってはいい思い出です。
ただ、好きという感情だけでは、どうしようも出来ないことがあると学びました。自分を偽って、大切なことも話せない関係のまま未来を共にすることは、恐ろしいことだと今なら分かります。
こんな私のことを、見捨てずに何度も叱ってくれた友人がいました。心配しながらも、一生懸命何かを伝えようとしてくれた友人もいました。そのありがたさが、盲目の私には分からなかった。
幸せな未来を歩んでいきたいと思うなら、周りの声に耳を傾けてみてください。厳しいことを言ってくれる人が、本当に自分のことを思って言ってくれているのか、それとも嫉妬心で言っているのかは見極めなければなりません。ただきっと、皆さんの周りにいる人たちは、幸せを心から願ってくれる人がいるのではないでしょうか?
たった一人でもいるのなら、その人の言葉に耳を傾けてみてください。私のような、不幸のどん底にいた人間が今の夫に出会えたのは、周りの言葉に耳を傾けようとしたからです。
厳しい言葉の中に、本物の愛情が隠れていることを知った時、幸せは舞い込んでくるのかもしれません。
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