”男性にモテる仕草5選”、”流行りの○○は男子ウケが悪い?!”
こんなタイトルのコラムを、私は貪りつくようにチェックしていた。それも毎日。好きな人ができるとコラムをチェック、パートナーができるとコラムをチェック、もちろん何もなくてもチェック。

ワーキャーされたくて恋愛コラムを読んだ

そう、私は男性から気に入ってもらいたいが故に、恋愛コラムを食い散らかしていた。
高校に入ったときから、可愛くてスタイルが良くてモテる子がチヤホヤされる。とにかく男性ウケする子がワーキャーされる。わたしはチヤホヤされたかったしワーキャーされてみたかった。
だからと言って、男性に直接「どんな子がモテるの!」「どんな仕草が好き?」なんて聞けなかった。その答えが自分とかけ離れすぎているような気がして、聞くのが怖かったのかもしれない。
こうして毎日、この仕草もっと取り入れて行こう…このお洋服、好きだけど男性ウケ悪そう…そんなことを考えながら過ごしていくうちに、本当に自分の好きなものは何なのか、男性ウケを狙ってばっかりで楽しいのか、わからなくなっていった。とにかくコラムを信じるしかなかった。

ボディタッチって最強しぐさじゃないの…?

あるとき、いつも通りに恋愛コラムを見ているとこんな見出しのものを見つけた。「実は引かれている女性の仕草5選」。ふむふむ…どれどれ…
ここで事件は起きた。なんとそこには「ボディタッチが多い」と書かれていたのだ。え!?な、なんて言った?!あ、あの最強しぐさのボディタッチが、引かれる?!わたしのカチコチな頭とガラスのハートに雷がピシャッと落ちた。どちらも割れることはなく、ゴールドの線が金継ぎのように入った。

私は今まで一体、何を信じてきたんだろう。数々のコラムを見てきて、ボディタッチ最強説が浮上していたのに…わたしのボディタッチを返して!

しかし、大学に入学し、仲良くなった友達が自分のやりたいことを素直にしている姿を見て、カチコチだった頭にいろんな香りの柔軟剤が投入された。そして友達に感化され、本当に自分がどうしたいのかを考えるようになった。男性ウケしなさそうだけど自分が好きなお洋服が載っている雑誌を買ってみた、髪色を自分がしたかった色に思い切ってしてみた、興味があったアカペラサークルに入ってみた...次第に男性ウケよりも自分ウケを意識するようになった。これが男性ウケから自分ウケを狙い始める人生のはじまりはじまり...!

”もっと自分らしくいたい”そう思うようになっていた。

社会人になってわたしは、地方から東京に引っ越しをした。まあなんと人が多い。ん、人も多いし、いろんな服を着ている人がいる…髪色もみんな違う…みんな自由で楽しそう。純粋に気持ちが高ぶった。ここならもっと自分らしくいられるかもしれない。そう思った途端、わたしの習慣からコラムを読むことは消え去っていた。なんなら、もう邪魔させないわよ!そんな気持ちだった。
古着に詳しい先輩にお店を教えてもらい、お仕事が休みの日は古着屋さん巡りをする。可愛くて愛おしい洋服がずらっと並ぶ。眼福。自分の好みだけで洋服を試着し、初めて男性ウケを考えずに洋服を買ってみた。なんだか嬉しくて、晴れ晴れしくて、1度帰宅して買った洋服に着替えてもう1度外に出てみた。

え…世界がワントーン明るい、きゅんきゅんする、世界にきゅんきゅんする!そんな風に思えた。友達が「その洋服可愛い!どこで買ったの?」と言ってくれた。

もちろんこの洋服が可愛いなんて、どのコラムにも載っていなかった。けどわたしは、いつも以上に自分のことが愛おしく思えた。

ペンネーム:ユミカ

"元"周りの目を気にするプロ。幼少期から今の今まで、家族のこと恋愛のこと性のこと生きづらさのこと...モヤモヤいっぱいのラブリーな人生。