6月10日 雨
髪の毛を切った。
梅雨に入る時期なので、くせ毛で毛量の多い私は縮毛矯正をかけないと大変なことになってしまう。

どうせ縮毛矯正をかけるなら…と、バッサリ20センチ切ってボブにすることにした。
ショートボブのサラサラストレートヘアでパッと思い浮かんだのが玉城ティナちゃんだったので、大好きな玉城ティナちゃんの写真を用意して美容室に向かった。

大好きな彼女と同じ髪型になれる。それだけで、ワクワクした

鏡に映った現実に死にたくなった

美容室に行き、ドキドキしながら
「こんな感じにしてください!」
と美容師さんに玉城ティナちゃんの写真を見せた。
「そうですね、髪の量が多いのでこの写真のままにはならないと思いますが…」
テンションの上がっていた私に美容師さんの言葉はちゃんと入ってこず、それでもいいと押し切って髪の毛を切ってもらった。

3時間くらい経ち、縮毛矯正もカットも終わって
「こんな感じです、どうですかね」
の合図と共に今まで雑誌に向けていた視線を鏡に移した。

ワクワクしながら鏡を見ると、玉城ティナちゃんとは程遠い巨顔の化け物が座っていた。

鏡に映ったのは、彼女とは程遠い自分。逃げるように美容室を後にした

あれ、なんで気づかなかった?
私と彼女では何もかも違うのに。
パッチリと綺麗なアーモンド型の目。
キュッと小さく筋の通った鼻。
口角の上がったバランスのいい口。
その全てがバランスよく収まった小さい顔。

私とは、顔、スタイル、存在、全てが違う。
私は、何も、何も持ってない。

私は何も持ってないのに玉城ティナちゃんになろうとした。

おこがましい、恥ずかしい、醜い、いっそ消えてしまいたい。
もうこのまま何も無かったかのように消えてしまえたら良かったのに。

恥ずかしい気持ちを押し込めて美容師さんにお礼を言い、お金を払って美容室を出た。
傘をさすほどではない小雨が降っていたが、全人類に
「こいつは玉城ティナになろうとしたおこがましい奴だ」
と笑われている気がしたので、隠れるように傘をさした。

まあいいか。彼女にはなれなかったけど、似合う髪型を探せばいいよね

歩く度に顔の横で揺れるサラサラの髪が私と不釣り合いで、少し泣きそうになった。
いいや。帰ってクッキーでも焼こうかな。

クッキーを焼き終わり、ぼーっとテレビを見ながら食べていると、縮毛矯正をかけた後特有の匂いがしてなんだかバカバカしくて笑ってしまった。

今日はご機嫌になるはずだったのにな。
まあいいか。私にストレートボブが似合わないことはわかったんだし。
玉城ティナちゃんになれなくても、次また似合う髪型探せばいいよね。