書くことが好きだと気付いた。
湧き上がってきた物語があった。
書いた。
書いて、書いて、書いて、書いた。
出来上がったものを応募した。
友達に批評してもらった。感想をもらった。
今まで味わったことのない達成感があった。

◎          ◎

小説家になりたいと思ったことはない。
それはある意味では本当で、ある意味では嘘だ。
子どもの頃から諦めが早かった。
無理なものは無理。現実を見ろ。
どうせ叶わないなら時間の無駄だ。
自分にそう言い聞かせて無視していた。
書こうとすらしたことがないくせに。

でもそんなの現実を見てるなんて言わない。
頑張った結果が報われないのが怖くて、現実に叩きのめされるのが怖くて、頑張ることから逃げてただけだ。

夢を追いかけることがダサいと思ったことなんてない。
自分の夢を追いかけ続けている人はまっすぐで綺麗でたくましい。
夢を持っている人がそれを叶えられるように、叶えるまで頑張れるように応援し続けてきた。
夢なんてない私の代わりに頑張って欲しいと思ってた。

◎          ◎

夢なんてない。
違う。嘘だ。
本当は小説家になりたいって言いたかったし、そのための勉強をしたかった。
その道に向かって進みたかった。
言えなかったのは私の弱さ。
夢に向かわなかったのは私のダサさ。
わかってる。
親のせいにして、先生のせいにして、環境のせいにして、全部周りのせいにしてきた私が悪いことなんてもうわかってる。
だから。
もう遅いかもしれないけど。
進もうと決めた。一歩を踏み出してみようと決めた。

小さな一歩はこのエッセイから。
書くことが楽しいと気付いた。
書くことで心が苦しくなることも、逆に重かった心が軽くなることにも気付いた。
自分の取るに足りない話をひたすら綴った。

ふと、物語が頭に浮かんだ。
一人の女性の話だった。
この人の物語を書きたいと思った。
試しに冒頭の数行を書き始めた。
何も考えず、構成も、登場人物の名前も、何もかもを行き当たりばったり、思いつくまま話を進めていった。

表現方法に悩んだ。
背景を説明する難しさを知った。
同じ単語が何度も続かないように調べた。
話のつながりを見直した。
専門知識をまとめた。
そうしてできた物語は七万字。卒業論文よりも書いた。
わからないなりに書いて、わからないなりに投稿した。
手が震えてて、胸がざわついて落ち着かなくて、それでも何かをやり切った私が誇らしかった。

◎          ◎

先日、結果が出た。
一次選考通過。
信じられなくて何度もサイトを見に行った。
嬉しくて嬉しくて泣きそうだった。叫びそうだった。
二次選考はあっさり落ちた。
やっぱりな、と瞬間的に思ったけど、心の奥で期待していた私はちゃんとがっかりしていた。
そんな自分を見つけられた。そんな自分を見つめられた。
悔しい。
そう思ったのは久しぶりだった。

今も小説を書いている。
次も応募する。
やっと踏み出せたこの一歩。
最後の一歩にならないように、長い歩みの最初の一歩になるように、やっと認められたこの夢を歩き続けていきたい。