私はこの春、転職をする。
苦労して入った新卒一括採用の会社を3年以内に離職する人は、依然3割存在している。その離職率3割の中の1人に私は今、足を踏み入れようとしているのだ。
きっかけは何か、と言われれば明確にあるのはあるものの、言語化できない気持ちも多くある。
表面上の退職理由は金銭的な問題だとごまかしてはいるものの、実際はこれ以上仕事を通して性格が屈折していく自分に耐えられなかったからだ。めっぽう社会の毒気に弱い。

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色々なことがあった2年間だった。泣きながら駅のホームに立ち尽くした日もあれば、同期や先輩と楽しく飲み明かした夜、先輩に奢ってもらったスターバックスの味。思い返せば色んなことがあった。

どうしても人間は辛かったことを脚色してしまいがちだけど、かけがえのない、新卒で入社した2年前の、春のときめくような日差しを今も覚えている。
入社初日で健康診断で隣だった女の子は、一緒に勉強するような仲になったよ。愚痴も聞いてくれる、優しい子だよ。
嫌な人もたくさんいたけど、この人ならなんでも話せる、私もこんな上司になりたいって思えた教育担当者の方、元気かな。

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今思えば、もっと自分の声を聞いてあげればよかった、と思う。
幼い頃から不機嫌で周りをコントロールするような父親と、収入のために、父親の機嫌を損なわないようにする母親の板挟みになり、人の顔色を伺う子供だった。

親の全てが嫌いだ、という訳ではないし、大きな金銭的な問題を抱えることなくここまで育ててもらったことにはもちろん感謝しているが、思い返せば思い返すほど私にとって実家は安心できるような場所ではなく、父親の怒号に怯える毎日を耐え抜く場所だった。

そうだ、と認めるのには時間がかかるし認めたくはないけど、多分私はアダルトチルドレンなのだろう。子供だな、大人になりたいな、ずっとそう思っている。

親の喜ぶような道を歩んでいたら間違いない、という思考停止のもと、私は知らず知らずのうちに安定、安心のルートを辿っていた。
結局、現職も転職先も地元ではよくある安定of安定ルート。もはや安定が不安定なこの時代に。

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そして転職が決まってからも無職にならないために、収入源を断たれないために、自分の心と体に鞭を打って職場に通い続けていた。
その結果、昨年秋頃に眠ることもできないほどの歯の痛みに襲われ、歯の神経を3本も失うことになった。

歯の神経ぐらいで、と思う人もいるだろうが、自分の身体の一部が無くなってしまった喪失感は、どんな言葉にも形容し難い悲しみだった。
また、病気の中でも歯に関する病気は自分の心掛け次第で防げた可能性が高いことから、自分自身がいかに自分をぞんざいに扱ってきたかを痛感させられた。

もちろん私の自己管理が行き届いていなかったことが原因であるが、この2年間で心も身体もボロボロになったことは、確かだ。
その後私がフランシスコ・ザビエルがの如く、皆に歯の大切さについて説いたのは言うまでもない。

周りの言うことなんか気にせず、早く自由になったらよかった。今は淀みなく、そう思う。
しかし自由と責任は隣り合わせであり、こうしたい、という思いがふと沸いたはいいものの、現実的な金銭問題を一番に考えてしまう。
まだまだ自分がどうしたいか、私はわかっていないことが多い。今もこれでよかったのか、毎日自問自答している。

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未来の私は、ちゃんと自分の声を聞けていますか?
これを読んで、恥ずかしいな青いな、馬鹿だなって思えてますか?
毎日、ちゃんと笑えていますか?
あなたの大切な人は、あなたのことを大切にしてくれていますか?
どうか、自分の声を無視しないであげてください。
そして、他人ばっかりじゃなく自分のことを一番に愛してください。
私からの、お願いです。
これからの毎日が笑顔溢れるようなものになりますように。