2020年春、私はかねてより憧れていた東京で働くことになった。私にとって、東京はきらびやかな街でたくさんの夢を見せくれる場所だった。

中学生の頃、アイドルのコンサートに行くのが憧れだった。唯一、機会があり、ずっと会いたいと思っていたアイドルに会いにいくことができた。初めての会場は、国立代々木競技場だった。中学生だった私は「一人で行きたい」と親にお願いしたが「まだ未成年だし、中学生だからダメ」と言われ祖母と東京へ行った。祖母とは品川駅で待ち合わせにしていたので、それまでは一人で新幹線に乗った。新幹線に乗るのは修学旅行以来で、一人で心細くどこかもどかしい気持ちで、新幹線の自由席で一時間半揺られながら外の景色を眺めていた。

いっぱい悩んでいた中学生の私に元気をくれた大好きなアイドルの存在

初めて乗る山手線は人が多く、地元の電車では見ることがない外の景色だった。何もかもが新鮮で、たくさんの刺激をもらった。その時「いつか、私もこの街に住みたい」と強く感じた。コンサートへは一人で行くため、祖母とは一時解散し、会場へと進んだ。初めてのコンサート会場は、今でも鮮明に覚えている。会場はとにかく広く、私の席はステージまでの距離がとにかく遠かった。それでも、大好きなアイドルと同じ空間にいれるだけで、どこか今までのストレスから解放され、元気がもらえた。

その後、また近くで会えるコンサートが開催されることがあり、私はどうしても行きたかったが、前回行ったことと受験を控えていたため、親に却下されて行けなかった。しかし、当時通っていた塾の先生が、私も行きたかったコンサートに行くことになったため「あなたのことを伝えておくね」と言って、後日私に「真剣な顔でね『受験が終わったら、いっぱい会いに来てね』と言っていたよ」と伝えてくれた。その感動は今でも忘れられないし、その言葉があったから荒れていた思春期真っただ中でも、何とか高校受験を乗り越えることができたのだと思う。

何もかもがうまくいかず、死を考えたこともあった

高校生になり、私はたくさんコンサートに行った。高校では演劇部に所属しながら、バイトもして一生懸命働いて貯めたお金。自分で稼いだお金で行くので、親からも何も言れなくなり「働くってなんていいのだろう」と感じた。

部活や恋愛でうまくいかず、親とも揉めることが多くなった。しかし、その時私はまだ未成年で家を出て行くことも出来ず、とにかく人に会いたくなかった。一時は、学校に行ったフリをして休んだり、何度か自殺も考えたことがあった。それでも、何とか立ち上がれたのは大好きなアイドルの存在があったからだ。大好きなアイドルから、たくさんの勇気や希望をもらった。

高校一年生の冬、好きなアイドルの出る舞台に行けることになり、東京の帝国劇場に行った。その舞台の中でこんなセリフがあった。「2020年、東京オリンピックが行われる。オリンピックは夢と希望の祭典なんだ」私は、そのセリフを聞いて「2020年に東京で働きたい」と強く感じた。

時は過ぎ、高校三年生になった私は、進路について考える時期になった。元々、就職するつもりだったが、正直「まだ社会に出たくない」という気持ちの方が強かったため、進路変更をして専門学校に通うことにした。コンサートに行く度にいろんな場所に行くのが好きになった私は、何も考えず“旅行学科”という道を選んだ。また、高校一年生から始めたバイトが接客業だったのと、人と関わるのが好きだったからだ。

専門学校やバイトを通して、私は自分の夢を見つけた

専門学校では、実践的なことから事務的なことまで様々な勉強をした。旅行会社に就職しようかと考えていたが、自分に提案力がないことと、まだまだ知識が足りない。だから、旅行会社ではない道で、旅行に関わる仕事にしようと思った。今後の人生のことを考えていく中で、私は以前よりやってみたいと思っていたことがあった。それは、リゾートバイトだ。冬休みの貴重な二週間を使って、福井の温泉旅館で住み込みのバイトをすることにした。緊張もしたが、やはり実際に働いてみて、旅行・観光業に関わりたいと思った。実際に働いて感じたことは、旅行・観光業はとにかく忙しく、目まぐるしいということだった。働いていて大切にしていたことが、“自分からお客様に積極的に関わる”ということ。普通なら、仕事だけしていればいいのだろうが、人と関わることで、たくさんの刺激をもらえた。

二週間のバイトを終え、私は「バスガイドになろう」と決意した。高校三年間、色々とあったが私の青春で、一番熱を注いだ“演劇”と専門学校で学んだこと。そして、高校一年生から専門学生二年生まで続けてきたバイト。これら全てが活かせる職業だと感じたからだ。また、二週間のリゾートバイトで感じた観光業の仕事の楽しさ。元々、じっとしていることが苦手な性格だったため、仕事であちこち行き、美味しいものも食べれるという利点にも大変惹かれたからだ。そして、自分の求めていた条件とも一致した会社から、内定をいただくことができた。とても嬉しくて、2020年3月の入社が楽しみだった。

タイムマシンに乗って思春期の自分に伝えたい、「大人って…」

中学生から高校生にかけて、精神状態が不安定で、とにかく先の見えない未来が不安で仕方がなかった。「大人になりたくない」といつも思っていて「大人って何だよ?大人って、そんなに偉いの?」といつも思っていた。確かに、今の私だって“大人”という括りではあるが、何が正解だなんてわからない。でも、もし今の私がタイムマシンに乗って過去の私に会えたら「大丈夫だよ。大人はそんなに悪くない。あなたを縛り付ける物も人も、そんなにいないから。自分の人生は、自分で切り開いていくのだから、胸を張って自分らしく前に進んで」と、ぜひ伝えてあげたい。

最後に、世界中で新型コロナウイルスが流行していて、私たちの会社も4月の半ばから休業になってしまいました。不安な毎日です。いつ終わるのかも、元の生活になるかもわからない。それでも私は、強く憧れのアイドルと同じこの東京で生きていきたい。それが今の私の夢であり、希望です。今を乗り越えれば、きっと明るい毎日がそこにはあるだろ。だからきっと、大丈夫、未来は待ってる。